北朝鮮の「参戦」は、ウクライナ越境攻撃の「転機」に? 死亡リスクはロシア兵の4倍、少数民族の特別大隊を編成
<人員不足に悩むロシア軍は、北朝鮮兵士の部隊を編成し、ウクライナ軍の越境攻撃を受けているロシア西部に投入するとウクライナのメディアが報じた>
今年8月に突如始まったウクライナによるロシア国内への越境攻撃。ロシア西部クルスク州で占領地を広げてきたウクライナ軍だが、現在ではロシア側の反撃によって4分の1ほどがロシア軍に奪還されたとの情報もある。そうしたなか、状況をさらに転換させる可能性があるのが、ロシア軍による北朝鮮人兵士による大隊の編成と前線への投入だ。 【画像】ウクライナ越境攻撃の現在...ロシア西部クルスク州での両軍の占領地マップ 10月15日にウクライナのリガ紙は、ウクライナ軍情報筋の話を引用し、ロシアは北朝鮮の金正恩総書記が送り込んだ部隊を最新の部隊に配備すると報じた。情報筋が同紙に語ったところでは、この部隊はその後、8月6日の越境攻撃以来、ウクライナが占領しているロシア南西部での戦闘任務に従事する可能性があるという。 ロシアは現在、ウクライナ戦争で大量の兵器、弾薬、軍装備品を日々失っているだけなく、戦闘における深刻な人手不足と戦っている。兵員の補充は強制徴兵と一時金頼みの新兵調達に頼っている。 ロシア軍の衰えゆく戦力を補うための取り組みの一環として、北朝鮮の兵士たちが「ブリヤート特別大隊」を編成することになっている。ブリヤートとは、シベリア、モンゴル北部、中国にまたがる地域の先住民族であるモンゴル系民族の名称だ。 本誌はロシア国防省に連絡を取り、この件についてコメントを求めた。 ■ウクライナの前線での死亡リスクが多い少数民族 大隊は最大3000人の北朝鮮兵士で構成されると予想され、現在小火器と弾薬の供与が行われている。 ロシア軍にはすでにブリヤート人が兵士として参加しており、ロシアの人口比に比べ、その存在は目立っている。 エクセター大学のアレクセイ・ベスドノフが2022年12月に行ったウクライナにおけるロシア人死亡者の民族的不平等に関する調査では、ロシアのテュルク系少数民族であるブリヤート人とトゥバ人たちは、ウクライナの前線で死亡するリスクがロシア民族の4倍近くになることがわかった。 この結果は、米国防総省のパトリック・ライダー報道官の発言が正しかったことを示している。今年6月、北朝鮮兵士がまもなく前線のロシア軍部隊に加わる可能性があるという報道に対し、ライダー報道官は、そうなれば彼らはウクライナの「大砲の餌食」になるだろうと発言した。 このとき、ライダーは、北朝鮮軍がロシア軍に加わる可能性を否定した。だが、北朝鮮兵士がロシア軍に参加するという報道はこれが初めてではない。 ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は13日夜の演説で、ロシアが北朝鮮軍をより直接的に参戦させる方向にシフトしたと述べた。「ロシアと北朝鮮のような国との同盟関係はますます強まっている。もはや単なる武器の移転だけではない。実際に、北朝鮮からウクライナで戦うロシア軍部隊へ人員が移転している」 10月3日、ウクライナとロシアの複数メディアは、6人の北朝鮮兵士がウクライナ東部ドネツク近郊の前線で死亡したと報じた。韓国政府関係者は、「両国の軍事関係の発展を考えれば、さらに兵員が移転する可能性は高い」と主張している。
ヒュー・キャメロン