<STAP細胞問題>「CDB解体」提言 iPS細胞研究への影響は?
“世界の三大不正”の1つに入った
「ヨーロッパの友人から、この不正問題は“世界の三大不正”の1つに入った、というメールをもらいました。このことにめげず、理化学研究所が進展していくことを期待します」。さまざまな不正を指摘されているSTAP細胞問題をめぐって、6月12日に開かれた記者会見の冒頭で、理化学研究所の「改革委員会」の岸輝雄委員長はこう述べました。
“三大不正”のうち2つは、ベル研究所のヘンドリック・シェーンらによる超伝導研究における不正事件(2002年発覚)と、ソウル大学のファン・ウソクらによるクローンES細胞研究における不正事件(2005年発覚)です。理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(CDB)の小保方晴子・研究ユニットリーダーらによるSTAP細胞研究における不正事件は、この2つと並ぶ大事件になってしまった、ということです。ある委員は記者会見で、STAP細胞の不正問題は「いろいろな問題がありますので、教科書に載る事件でしょう」と述べました。 この問題をめぐって、理化学研究所は調査委員会を設立し、どのような不正が行われたのかを検証しました。4月1日にその報告書が公表され、小保方氏の論文は「不正」と認定されました。 これを受けて同研究所は、野依良治理事長の指示で、外部の有識者からなる「CDC自己点検検証委員会」を設置。ほぼ同時に、同研究所は野依理事長を本部長とする「研究不正再発防止改革推進本部」を設立し、その下で、外部の有識者からなる「研究不正再発防止のための改革委員会」が設置され、提言をまとめるための調査と検討が行われました。 12日、「検証委員会」の報告書(A4で27頁)と「改革委員会」の「提言書」(同32頁)が同時に公表されました。
小保方氏らの処分だけで再発防止は不可能
会見は、改革委員会の岸委員長による提言書の説明から始まりました。 改革委員会は、前述の調査委員会で対象とされたわずか数点の不正だけでなく、そのほかに指摘されている不正も含めて検証を行うこと、そのうえで、小保方氏だけでなく共著者や監督責任者、所属長、理事などの役割や責任、組織運営やガバナンスのあり方についても検証を行うことを、基本的な考え方としています。 「背景には、研究不正行為を誘発する、あるいは研究不正行為を抑止できない、CDBの組織としての構造的な欠陥があった」と、改革委員会はCDBの組織的欠陥も厳しく批判しました。そのうえで、研究不正の再発防止策として、「STAP問題に係る個人及び組織の責任を明確にし、相応の厳しい処分を行うこと」「任期制の職員の雇用を確保したうえで早急にCDBを解体すること。新たなセンターを立ち上げる場合は、トップ層を交代し、研究分野及び体制を再構築すること」など、きわめて厳しい提言を8点挙げました。 改革委員会は、小保方氏の論文そのものだけではなく、彼女の採用の経緯などにも多くの問題があることを批判しました。そして彼女や共著者などの処分だけでは再発防止は不可能と考え、トップの交代のみならず、CDBという組織そのものを、よくいえば刷新、悪くいえば廃止のうえでの出直しをすることを理研に求めているのです。