「直列8気筒」が生んだエレガントな自動車 30選 後編 戦前戦後の高性能モデル
オールズモビル・エイト(1932年)
オールズモビル107年の歴史の中で唯一の直8モデルは、1932年に直6モデルに代わって登場した。当時の排気量は3.9L、出力は87psとされていたが、1933年には90ps、1935年には100psに引き上げられた。 1937年、ストローク長を減らしボアを増やすことで、排気量を4.2Lに拡大した。それに伴い最高出力も110psに向上した。
ポンティアック・エイト(1933年)
ポンティアックは、同じゼネラルモーターズ傘下のブランドであるオールズモビルより1年遅れて直8を導入した。このエンジンはエコノミーエイトとして知られ、1933年モデルで3.7L、最高出力77psを発生したが、すぐに3.8L、87psに上昇した。 ポンティアックはゼネラルモーターズ傘下でも長く直8を使い続けた。1954年のチーフテン(写真)には127psの4.4Lバージョンが搭載されたが、その後、より大排気量で180psという、強力な新型ストラトストリークV8に駆逐された。
デイムラー・トゥエンティファイブ(1934年)
「V 26」として知られる英国デイムラーの3.8L直8は、上級モデルのトゥエンティファイブ(Twenty-Five)と、1935年秋に国王ジョージ5世に納車されたフーパーボディのリムジンに搭載された。排気量はやがて4.6Lに引き上げられ、スポーティなライトストレートエイト用に3.4Lの新エンジンが開発された。 デイムラーは、第二次世界大戦後もこのレイアウトに関心を持ち続けた数少ないメーカーの1つであり、最終的には1953年にパッカードとポンティアックより少し早く手を引いた。
ロールス・ロイス・ファントムIV(1950年)
初代ファントムIVは、当時のエリザベス王女とフィリップ王子の専用車として発注を受け、女王が即位した際には「御料車」となった。その後、さらに17台が生産され(最後の1台は1956年)、国家の運営を本業とする人々にのみ供給された。 ロールス・ロイスとしては唯一の直列8気筒エンジン車で、もともとは軍用車に使用されていたユニットだった。
クライスラー・アトランティック・コンセプト(1995年)
直列8気筒エンジンは1995年にはすっかり過去の存在となっていたが、クライスラーはこの年、アトランティックというコンセプトカーに採用した。というのも、アトランティックは1930年代のコーチビルド車に強い影響を受けており、その多くが直8エンジンを搭載していたからだ。 アトランティックに搭載された4.0L直8の起源は質素なものだった。簡単に言えば、ダッジ・ネオンの2.0L 4気筒を2基使用したものである。
AUTOCAR UK(執筆) 林汰久也(翻訳)