「耐震、全然ダメです」そして誰もいなくなった…世田谷・違法高級マンションで住民らを襲った「悲劇の数々」
わざわざ「手入力」
「東急側が出した数字に違和感を抱き、細かく資料を見比べると、その度に担当者の説明が二転三転しました。そこで3ヵ月間かけて何度も再計算を要請し、実はコンピューターで再計算した数値を東急側がわざわざ手入力で入れ替え、判定結果を出していたことが判明しました。 手入力を行ったことは東急の担当者も当初には説明していません。どうしてコンピューターで計算した数値をあえて手で入力しなおさなければならないのか。そうしなければならなかった理由があったとしか思えない」 これまで「区の認可が下りた建物だから大丈夫」と話していた東急不動産の担当者も結果を受け、こう口走るようになったという。 「手のひらを返したかのように『どうして区はこんなマンションを建てたんだ』と言い出した。もう唖然とするしかなかったです。行政に申請を出したのは東急不動産。どうして書類を出したはずのあなたたちが被害者のような態度を取れるのか。理解に苦しみます」 すると2020年12月、東急不動産は部屋の買い取りを含めた大規模補修を行う方針を表明。しかし、ここからトラブルは国や区を巻き込んだ大騒動へと発展していく。
「区を訴えたりしませんよね?」
「大規模補修を行うと言っても、そもそもフロレスタはすでに構造上の問題がある建物です。どうやってその安全性の認可を取るのかが不明でした。そこで住民の一人が確認にために国交省に連絡を入れると『フロレスタはすでに住民からの通報を受けており、世田谷区に下ろしています。すぐに区に電話してください』との答えがあった。 言われた通りに一報をいれると今度は世田谷区から『すぐに来てほしい』と急かされる。実際に区役所に行くと、8人ほどの職員が出迎え、『区を訴えたりしませんか?』と切り出してきました。住民も呆れながら『訴える暇なんてありません。とにかく助けてください。区としてすぐに対応してください』と伝えました」 その後、組合、東急不動産、世田谷区の3者による面談を開催。施工不良の現状と今後について話し合いを重ねた。 「その場には東急建設の当時の現場主任も出席していました。本人は泣きながら『すみません』と謝罪していましたが、実際に組合関係者が『現場で何が起こっていたのか』と尋ねると『覚えていません』と答える。結局、納得できる説明はありませんでした」