「必ず来る」フェンシングがパリ五輪でブレークした背景は 医科学・情報支援のトップが語る日本のメダルラッシュ
今夏のパリ五輪で日本選手団は金メダル20個、銀12個、銅13個を獲得した。自国開催だった前回の東京五輪を除けば、金メダルの数もメダル総数も過去最多の華々しい活躍だ。 【写真】競技中に撮影された写真が「週刊誌の袋とじになっていた」 スポーツメディアの容姿報道に疑問 「プライドを持っているアスリートなのに、親しみやすい名前をつけたり、1位になった選手を取り上げるのではなくて、見た目のかわいい選手を優先的に取り上げていたり。性の消費対象として…」
この好成績について、国立スポーツ科学センター(JISS)の久木留毅(くきどめ・たけし)所長は「日本の取り組みは間違っていなかった」と確信を深めたという。久木留さんは、スポーツ医科学や情報面から日本選手団を支える日本スポーツ振興センター(JSC)で、トップアスリートが対象の「ハイパフォーマンススポーツセンター長」も務める。今回、メダルを量産したレスリングとフェンシングを例に「成功の背景」を振り返るとともに、今後の展望を語ってもらった。(聞き手 共同通信=村形勘樹) ―パリ五輪はどんな位置付けの大会だったか。 「自国開催の東京五輪後の大会であり、多くの人が日本の本当の実力を気にしていた。スポーツ庁は選手強化の予算を維持し、真価が問われる大会になると考えていた」 ―日本選手団の成績をどう評価するか。 「日本オリンピック委員会(JOC)は金メダル数で海外開催の五輪で最多更新を目標に掲げ、2004年アテネ五輪の16個を上回る20個を獲得した。メダル総数も海外最多だった2016年リオデジャネイロ五輪の41個を超えた。大きな地の利があった東京五輪(金27、銀14、銅17)からは落としたものの頑張った結果と言える」
―活躍の要因は。 「東京五輪前から『オールジャパン体制』を掲げてきた。今回も国やJOCが連携し、スポーツ庁所管のJSCが選手村の外に設置した支援拠点の場所を決める際も、みんなで複数の候補地を見て回った。選手団が選手村に入ってからも綿密に連絡を取り合ってサポートに取り組んだことが功を奏した」 ―印象に残ったことは。 「日本が取り組んできた施策が間違っていなかったと確信できた。一つはJOCが寄宿制で有望選手を育てる『エリートアカデミー』。その象徴がメダルを量産したレスリングとフェンシングだった」 ―金メダル2、銀1、銅2を獲得したフェンシング躍進の理由は。 「国際競技力向上の基盤となる要素は四つある。①メダルを取れる選手②それを支えるコーチ③拠点の練習場や宿泊所といった場所④どの大会に出場していくかの戦略。フェンシングはこの全てがそろっていた。 まず、エリートアカデミーやタレント発掘がしっかりしていてフルーレ、エペ、サーブルの全種別でいい選手がそろっていた。