「必ず来る」フェンシングがパリ五輪でブレークした背景は 医科学・情報支援のトップが語る日本のメダルラッシュ
コーチの面では、東京五輪の男子フルーレ団体で優勝したフランス代表メンバーのエルワン・ルペシューさんをコーチに迎えたのは画期的だった。 場所という意味では、味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC・東京都北区)にピストが30面整備されている。 大会出場の選択も新型コロナウイルス禍の時期から計画的に進められていた。 フェンシングは東京五輪前から『必ず来る』と言われながらなかなかブレークできなかったが、この形で強化していけば大丈夫だと実感できた」 ―レスリングは過去最多の金8個を含む11個のメダルを獲得した。 「見落としてはいけないのが、2001年から協会が始めたナショナルトレーニングシステム。全国6ブロックでジュニア選手を集め、さらに有望選手を育成する仕組みをつくった。10年かけた後に2012年ロンドン五輪を迎え、当時優勝候補として出場した男子選手が今では指導者となった。その人たちが今回躍進した選手を支えたことは注目すべき点。(今大会で日本代表コーチを務めた)ロンドン五輪フリースタイル66キロ級で金メダルに輝いた米満達弘さんらの存在は非常に大きかった」
「コーチには大学院での勉強を勧め、医科学を学んだ人材が育った。今回の成功は約20年をかけて耕した土壌が組み合わさった結果。たまたまではない」 ―レスリングは海外の大会で東京五輪からの飛躍を遂げた。背景は。 「フェンシング、体操(金3、銅1)もそうかもしれないが(ウクライナ侵攻に伴って)ロシア勢がほぼ出ていなかったことに触れなければいけない。レスリングは東京五輪で金メダルの約2割をロシアが占めた。不在だったことを冷静に分析し、ロサンゼルス五輪に向かうことが大事」 ―競技人口が少ない近代五種で男子の佐藤大宗(自衛隊)が日本勢初メダルとなる「銀」を獲得した。 「強化プランづくりの話し合いで他競技との合同練習をアドバイスしていた。工夫により力は引き上げられる。(競技人口という)直径は小さくても、高さを積み上げられる『円柱方式』で勝てる。フェンシングやレスリングもこれに当てはまる」 ―総合馬術団体は3位で、日本勢92年ぶりの表彰台も話題になった。