日本の「すしロボット」が、なぜ海外で売れる? 高級すし店の大将が「無限の可能性」を感じたワケ
海外でニーズが拡大する背景
鈴木社長によれば、国内では居酒屋、和食レストランからの引き合いが多いという。特に、シャリ玉の大きさを2段階に切り替えられる点が注目されている。昼はうどんとのセットで出すのでシャリの長さを55ミリ、夜は江戸前すしのセットとして45ミリで提供するといったことも可能だ。 職人が握る高級すしは、回転すしよりもシャリ玉が小さめ。長さ45ミリのシャリは、職人に対するすしロボットの挑戦という。 飲食店以外にも、イベント会社、バーベキュー場、コンドミニアムなどからの注文があり、ユニークなところでは高齢者施設からのニーズがある。お年寄りは、すしが好きな人が多く、たまにすしをつくって振舞うと大変喜ばれるからだ。 海外では製造過程を見せるレストランが人気だという。丸亀製麺がハワイやロンドンでウケているのも、お店で粉からうどんを打つところから、ゆでて提供するまでの工程を見せているからだ。 エスキューブがデザイン性も重視したのは、顧客の座る席から、シャリ玉が成型されて出てくるのを、しっかり見せるためである。 「海外では、すしの専門店はほとんどなくて、ジャパニーズレストランでロール系主体に出している。他に、天ぷら、から揚げなども出しているといった感じ。ちゃんとしたすしが広まるきっかけになるのではないか」と佐藤氏も期待を寄せている。 つまり、国内外ともに、すしを本業としていない店の周辺的な需要開拓を狙っている。実はそこに、巨大な潜在的なニーズが眠っているのではないかというのが、鈴茂器工の読みだ。 鈴茂器工の2024年3月期決算は、売上高約145億円(前年同期比7.9%増)、経常利益約15億円(同31.5%増)となった。 好調の背景として、国内ではコロナ禍が収束し、インバウンド需要が伸びていることが挙げられる。すしロボットだけでなく、人手不足による省人化の動きからご飯盛付けロボットなども好調だ。 売り上げの3分の1ほどを占める海外は、日系企業の進出が進んでいる、東アジア、東南アジア、省人化のニーズが高い北米で堅調だった。 また、10月23~24日に東京・池袋で開催された「スズモフェア2024東京」にて、受付から配席までを自動化する「自動配席システム ARESEA(アレシア)」のリリースを発表した。店舗の空席状況に合わせた最適な配席を、AIが案内。ホールスタッフの業務が接客により集中できるので、業務効率化と顧客満足度向上を同時に実現できるという。 来年開催される予定である大阪・関西万博の「大阪外食産業協会 パビリオン」にて、象印マホービンがおにぎり専門店を出店する。スズモフェアでは、象印と鈴茂器工が協業して開発を進めている「おむすび製造半自動化システム(仮称)」の試作機が初披露された。 これは、ロボットが盛り付けたご飯を、半自動でおにぎりに仕上げるというもの。ご飯を人力でふんわりふっくらと均一に盛り付けるのは技術を要するが、当該機器により安定的に1時間に360個のぺースで、おにぎりがつくれるという。 しかも、絶妙なつかみ具合で、機械のアームによりおにぎりを持ち上げ、海苔付けするまでを自動的に行う。 このように、すしロボットのつくるすしを専門的に扱う業者以外の周辺市場の開拓、AI自動配席システム、半自動おにぎり製造機は、米飯のさらなる普及を力強くサポートすると考えられる。 米の価格が例年の約1.5倍に高騰したニュースが話題になったこともあり、消費量が落ち込む懸念がある。しかし、鈴茂器工の米飯加工機器の進化により、米の需要が増えて食料自給率が改善し、海外には和食文化が浸透するのならば、喜ばしいことだといえる。 (長浜淳之介)
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