急速に進化した慢性腎臓病の治療。専門医「1983年に人工透析の開始年齢は平均52歳だったが今では…」注目すべき<新薬>と<運動療法>とは?
◆腎臓が弱ってきたら運動習慣は必要 慢性腎臓病の治療における、もう一つの大きな進化が、運動療法です。腎臓リハビリの主要な構成要素である運動療法を習慣化することが、慢性腎臓病の予防や改善に役立ちます。 腎機能が基準値以下に低下しているが、人工透析には至っていない時期の患者さんを、「保存期慢性腎臓病患者」と言います。 保存期においては、現段階で残されている腎臓の機能をキープし、悪化をできる限り防ぐことが目標となります。 すなわち、人工透析に至らないようにする、もしくはその時期を遅らせることです。そのために、運動が有効であることがわかっています。 安静第一にしていると、患者さんが運動不足からサルコペニアやフレイルに陥りがちでした。サルコペニアも、フレイルも、慢性腎臓病の悪化要因です。その予防に運動が効果を発揮します。 また、低栄養状態を予防することもできます。運動の習慣化によって活動量が上がれば、当然ながらお腹も減ります。それが健康的な食生活を呼び込むのです。 こうした人たちにとって運動は、以下の4つの意味を持ちます。 ・保存期慢性腎臓病患者の運動の効能 (1)運動で腎機能は悪化せず、むしろ改善する (2)人工透析への移行を防止するための治療法として必要 (3)運動が心血管疾患の予防に有効 (4)サルコペニアやフレイル、低栄養状態の予防に有効
◆人工透析を受けている患者さんの運動の効能 また、人工透析を受けている患者さんにとっても、運動は重要です。 これまでは、人工透析を続けているうちに足腰がどんどん弱り、サルコペニアやフレイルを発症し、ついには車イスに頼るという人がかなりいました。 足腰が弱るのを防ぎ、人工透析の効率を上げるのに、運動が効果的であることを多くのデータが示しています。 高齢の患者さんが陥りやすい低栄養状態を予防するのにも、運動が役立ちます。 こうした人たちにとって運動は、以下の4つの意味を持ちます。 ・人工透析を受けている患者さんの運動の効能 (1)運動で人工透析の効率が上がる。疲労も残らなくなる (2)ADL(日常生活動作)の改善、降圧薬を減らし、心不全治療のためにも有効 (3)運動が心血管疾患の予防に有効 (4)サルコペニアやフレイル、低栄養状態の予防に有効 保存期の人や人工透析を受けている人は、心血管疾患に健常者よりもかかりやすいとされますが、心血管疾患の予防にも運動が有効であることがわかっています。 ※本稿は、『腎臓の名医が教える 腎機能 自力で強まる体操と食事』(徳間書店)の一部を再編集したものです。
上月正博
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