急速に進化した慢性腎臓病の治療。専門医「1983年に人工透析の開始年齢は平均52歳だったが今では…」注目すべき<新薬>と<運動療法>とは?
◆注目すべき2つの新薬の効果 最近では、生活習慣病の治療薬だけではなく、腎臓病自体に働きかける薬が出てきました。ここで、代表的な新薬を2つ紹介しておきましょう。 (1)SGLT2(エスジーエルティツー)阻害薬 (2)HIF(ヒフ)―PH(ピーエイチ)阻害薬 一つめのSGLT2阻害薬は、もともと糖尿病の治療薬です。それが、慢性腎臓病にも効果があることがわかり、保険適用されるようになりました。 SGLT2という物質は、腎臓の尿細管という場所で、体に必要なブドウ糖やナトリウムを再吸収する働きをしています。SGLT2阻害薬は、この再吸収を阻害します。 これによって、余分なブドウ糖が再吸収されずに尿として排出されるため、血糖値を下げるのです。 この尿細管でブドウ糖が再吸収される際、酸素を消費します。このため、再吸収量が増えると、酸素をたくさん使ってしまい、腎臓が低酸素状態に陥ります。 そして、低酸素状態に陥った腎臓の組織が繊維化していくのです。繊維化が進むと、腎機能が低下し、腎不全が起こりやすくなります。 この阻害薬によって再吸収を抑制すると、腎臓の低酸素状態が回避されるため、繊維化による腎機能の悪化を防ぐとされています。 SGLT2阻害薬は飲み薬です。慢性腎臓病の初期段階から、これを服用することで人工透析を回避したり、透析の開始時期を遅らせたりすることが期待できます。
◆HIF-PH阻害薬の効果 HIF-PH阻害薬は、慢性腎臓病が原因で起こる貧血を改善する薬で、こちらも保険適用になっています。 腎臓では、赤血球の産生を促す「エリスロポエチン」というホルモンが作られています。 慢性腎臓病によって腎機能が低下すると、エリスロポエチンの産生が不足し、必要な赤血球が作られないため貧血になります。こうした貧血を「腎性貧血」といいます。 HIF-PH阻害薬は、腎臓のエリスロポエチンを作る機能を改善させ、赤血球の不足や貧血を改善する効果をもたらします。 腎性貧血が起こると、動悸や息切れ、立ちくらみ、疲労感といった貧血の症状が起こってきますが、HIF-PH阻害薬はこれらの症状の改善にも役立つのです。 HIF-PH阻害薬も飲み薬であるため使いやすく、さまざまな貧血症状に悩む患者さんの助けとなっています。 慢性腎臓病による貧血の症状にお困りの人は、ぜひ担当医師に問い合わせてみるといいでしょう。
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