なぜ、Amazonはレジなし精算「ジャスト・ウォークアウト」を撤去した? フリクションレスの視点で考察
普段の購買体験でフリクションを感じるタイミングはどこか?
たとえばECサイトで商品を購入するとき、あなたはどのステップで摩擦・ストレスを感じますか? 商品を探して検討するタイミングでしょうか? それとも会員登録をするタイミング? 決済のタイミング? 今まで使ってきて使いやすいな、と思ったECサイトを思い返してみてください。フリクションを感じるタイミングは、注文フローのステップの後ろの方に存在することが多いのではないでしょうか? 一般的に、商品を購入するときにフリクションは無ければ無い方が良い、あるのであれば最後の方のステップにあると良い、と考えられています。 商品を探してお気に入りに登録して比較検討したいとき、再入荷メールを登録したいとき、何かインセンティブを獲得したいと思っているときに、まだ買うかも決まっていないユーザーに対して、会員登録やアプリのインストールを促すことはフリクションになりかねません。 もし自身がそのECサイトのマーケターだったとしたら、何かしらの施策を打ちたいと思ったときに「このポップアップやバナーは、フローやユーザーのフリクションになりかねないか」と一考することをおすすめします。仮にマーケティングチームの指標が一時的に達成したとしても、一過性の可能性も大いにあります。
自動決済システムを導入したことで別のフリクションが生まれた?
前述したジャスト・ウォークアウトも、決済というステップ自体をスキップすることでフリクションレスの実現を試みたソリューションです。しかし、ユーザーのペインを解消するために考案したUX(User eXperience)によって、今まで存在しなかったペインやフリクションが発生し、その結果、ユーザーの期待に添えるものではなかったのではないか、と推測しています。 たとえば、サービスを利用する前に必要な会員登録や設定が必要だったことが挙げられます。一般的なスーパーマーケットであれば、何の手続きや操作もなく、商品をカートに入れて、レジに並んで支払いを完了すれば商品を購入することが可能です。店舗面積や品揃え・品質という変数要素を除けば、購買行動の最後にレジ待ち・決済というフリクションが訪れることが通常です。 また、買い物終了直後にレシートが発行されない仕様だったことも要因と言えそうです。ユーザーは、請求金額は正しいのだろうか、割引は適用されたのだろうか、という不安を抱えながら一定時間過ごすのです(もちろん忘れてしまう場合もあるでしょうが)。買い物が終わった達成感よりも、不安感が勝る買い物体験は後味が悪いものですよね。 決済時のフリクションレスに焦点を当てた結果、一般的なスーパーの購買体験では存在しなかった利用前・後のフリクションが発生したのも、撤去に至った要因の1つではないかと想像します。