国産小型車の転換点だった2019年 世界トップの性能水準に
一方、日本のメーカーは、元よりアメリカをバカになどできない。むしろ敗戦国の立場だ。「自動車の本場アメリカで腕試し」と胸を借りる意気込みでアメリカ進出に臨み、いち早く排ガス規制をクリアして、欧州ブランドが失ったマーケットを拾い集めて行った。そうやって日本という本来の母国マーケットに加え、北米マーケットを第2の母国とすることで経済基盤を固め、以後1980年代を通してその差を一気に詰めていった。日米両国を母国となし得たことこそが、後の日本自動車産業の反映へと繋がっていくのだ。
数々の名車が生まれた89年、性能指標で世界一に
欧州ブランドの多くを北米から駆逐してしまい(と言っても前述のようにむしろ欧州メーカーの自業自得な部分は多かった)、ついには地元米国のクルマの販売にまで影響を与えて、激しい貿易摩擦を引き起こしたことを覚えている読者もいるだろう。
こうして着々と実績を積み重ねた日本車は、1989年と翌90年に後々まで語られる名車を一気に花開かせた。トヨタ・セルシオ、日産スカイラインGT-R、ユーノス・ロードスター、ホンダNSX。これらのクルマは日本車の実力を世界に知らしめ、日本車の時代を確かに示した。 しかしながら、これらのクルマはやはり各社のラインナップにおいて特異なクルマであり、なんらかの性能指標で世界のスタンダードを書き換えたクルマだといえる。逆にいえば、各社の平均的なモデルまでもが世界水準だったかといえば、残念ながらそうではなかった。 そこからバブル崩壊を挟んで約30年。ようやく日本のコンパクトカー、それも普通に購入できるBセグメントやCセグメントのクルマが、世界トップの一角を占める日がやってきたのだ。
ここ5年で「リニアリティ」が目覚ましい進歩
具体的にはどのクルマか? デビュー順に挙げれば、トヨタ・カローラ、マツダMAZDA3、トヨタ・ヤリスということになる。厳密にいえば、ヴィッツの後継となるヤリスは未発売で、正式発売は年明けになるが、サーキットでの試乗が行われて、その驚くべき実力の片鱗はすでに見て取れた。