伊藤忠が目をつけたサステナ情報開示スタートアップ。迫る2026年問題、時価総3兆円超え企業狙い商機
伊藤忠商事が、2027年3月期から始まるサステナビリティ情報開示義務化への対応を加速させている。 【全画像をみる】伊藤忠が目をつけたサステナ情報開示スタートアップ。迫る2026年問題、時価総3兆円超え企業狙い商機 2024年11月27日、booost technologiesと資本・業務提携契約を締結したと発表。同社が提供する統合型SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)プラットフォーム「サステナビリティERP」をグループ連結約270社に加え、グループ全体の顧客基盤に拡販していく方針を打ち出した。 翌28日には、booost technologiesが実施中のシリーズBラウンドで、独立系VC・One Capitalら3社とともに第三者割当増資で同社に出資したほか、同社が立ち上げた「日本をサステナビリティ・トランスフォーメーション先進国へ」プロジェクトに賛同し、ともに日本のSX加速を目指すことも明らかにしている。
伊藤忠が目をつけたワケ
boost technologiesは現在、サステナビリティERPを80カ国以上、約2000社、18万6000拠点以上に提供(2024年10月末現在)。特に時価総額3兆円以上の企業に注力しており、現在のシェア10%から20%への拡大を目指している。 伊藤忠は2023年から同社システムを段階的に試験導入。国内外600拠点からのデータ収集・管理の効率化を進めていた。 勢いのあるスタートアップとはいえ、伊藤忠が出資・業務提携するほどの価値をbooost technologiesに見出した決め手は何だったのか。 その前段として、同社準執行役員ITデジタル戦略部長兼伊藤忠サイバー&インテリジェンス社長の浦上善一郎氏は、従来のサステナビリティデータ収集における課題を次のように話す。 「従来はエクセルを国内外600拠点にメールで送って返してもらう形でした。毎年集める項目が変わるためエクセルも変更する必要があり、業務負荷が非常に大きい。バージョン管理も煩雑でした」(浦上氏) 日本では、「サステナビリティ」と言えば脱炭素や脱プラといった環境面の取り組みに注目が集まりがちだが、グローバルスタンダードの定義はもっと広い。企業には二酸化炭素排出量といった環境面の情報開示以外にも、人的資本や事業活動におけるガバナンスなど、多様な情報開示が求められているのが現状だ。 この課題を解決するため、booost technologiesのサステナビリティERP「booost Sustainability Cloud」を導入した。決め手は主に4点あったという。 「1点目は、業務のあるべき姿としての世界のベストプラクティス(先進企業における効果的な実践)を持っていること。2点目は、当社のニーズに応じたカスタマイズが可能なこと。3点目は、SXに関するコンサルティング部隊を持っていること。4点目は、今後必要となる人的資本を含む非財務情報全般への拡張性があることです」(浦上氏)