「ニュースを繰り返し見ると心が疲弊する」パニック障害を経験した大場久美子がテレビのスイッチを入れない理由 #今つらいあなたへ
「つらい時は無理に感情を抑える必要はない」そう語るのは、自身も10年間パニック障害に苦しんだ経験を持つ俳優の大場久美子さん。現在は心理カウンセラーの資格を取得し、身近な人の悩みにも寄り添っているという大場さんに、過去を振り返って学んだことや、自分の気持ちをコントロールするために自身で取り組んでいることについて聞いた。(聞き手:荻上チキ/TBSラジオ/Yahoo!ニュース Voice)
◆専門家が見る記事のポイント
“パニック発作”は、体調や血中二酸化炭素濃度と酸素濃度のバランスの変化などによって、誰にでも起こりえる症状。起こったからといって、「メンタルが弱い」「精神的にダメだ」と思い込む必要はない。ただ、発作が起きることが不安で外出できないなど、日常生活に支障をきたした場合は“パニック障害”であるため、大場さんのように医師に相談するのが一番。【心療内科医 海原純子氏】
パニック障害に苦しんだ10年。バイタル計を持ち歩く日々
――大場さんは10年もの間パニック障害に苦しみ、克服した経験があるとうかがいました。どのような症状だったのでしょうか。 大場久美子: 母が他界した次の年、ある日リビングに入ったら突然、動悸がして苦しくなりました。その時は母の葬儀が終わったばかりだったので、そういう時もあるよねと思っていたんですが、それをどんどん繰り返すようになってしまって。パニック障害は人それぞれ症状が違いますが、私の場合は息苦しさ、動悸に加えて、たくさん人がいるところにいられない広場恐怖症のような状態になります。近くの病院へ行きましたが、病名はわかりませんでした。 そのまま4年間ぐらいモヤモヤとつらい時期を過ごしていたら、同じ症状の人に出会って、「私と同じパニック障害じゃないの?」と言われました。その方が専門の先生を紹介してくださって、受診したところ、パニック障害と診断されました。診断されたことで、それまで抱えていたモヤモヤが一気にすっきりしたような気持ちになったんですよね。だって「なぜモヤモヤするのかわからないこと」が一番の不安だったから。原因がわかったなら治せばいいじゃない、と前向きな気持ちになれました。 ――お仕事したり日常生活を送ったりする中で、どのように症状と向き合っていたのでしょうか。 大場久美子: 最初は苦しさのあまりに救急車を呼ぶ時もありました。でも、病院に着く頃には治っていることもあって……。なので、まずは内科でパニック障害以外に不調の原因がないかどうかを確認しました。心臓も悪くなかったし、他に大きな問題もないと確認できて、ひと安心しました。それからは苦しくなってきた時に自分がどういう状態なのかを確認するために、バイタル計を常に持って歩くようになりました。数字で大丈夫だと自己判断できれば安心できるし、症状が出ても「しばらくやり過ごせばこの症状がおさまるんだ」って落ち着いていられるようになりました。 あと、知り合いに健康体操を教えている先生がいて、教室へ誘ってくれたことがありました。体を動かすことが良いとは聞いていたけれど、教室の中で発作を起こしてしまったらご迷惑だと思って、一度お断りしたんです。それでも、その先生は「全然、平気。みんなに言っておくからいらっしゃい」って言ってくれて。実際に教室に参加した時にやっぱり発作が起こって、5分もしないうちにひっくり返って呼吸を整えるようなことになってしまったのですが、誰も私に変な気遣いをせずにいてくれたんですよ。「ここは私の居場所だ」と思えました。 どこか調子悪い時に、私は常温のお水を飲みたいと思うんですが、それを友達が覚えててくれて、すっと常温のお水を出してくれたこともありました。そういうふうに、パニック障害を理解してくれているんだとか、病気の名前を知ってくれているんだと思えたことで、自分の居場所が広がっていきました。それは自分がカミングアウトしたからこそ、得られたものだと思います。もちろん、病気を知って去った人もいるけれども、得たものもたくさんあった。とにかくたくさんの方に助けられて過ごしやすい環境ができました。