エルメス流でオータムカラー、秋冬トレンドのブラウン系をまとう 奥行きを味わい深く
■メリハリあるレイヤード、色調・質感とベルトで
秋冬の装いでは、防寒に役立つレイヤード(重ね着)がスタイリングの軸になります。配色や素材感などを上手に響き合わせるバランスづくりが着こなしの決め手。 いろいろなトーンや質感を選びやすいブラウン系なら、メリハリの利いた同系色コーディネートがきれいに決まります。 濃いブラウン系のニットトップスにスキニーパンツという上下に、コートのダークブラウンのインナーをのぞかせてスタイリングをしました。 目立つ太めベルトを巻いて、しっかりとウエストマーク。かさばりを抑え込みました。上から羽織った艶めきコートはトーンが薄めだから、濃淡差がくっきり。オーバーサイズ気味のシルエットが逆に着痩せ見えを引き出す知恵ありレイヤードです。
■職人仕事を重んじる気風 1837年創業の老舗メゾン
1837年に創業した「エルメス」は187年もの歴史を持つ、フランスを代表する老舗ブランドです。 こうした別格の存在感を備えたブランドを指す呼び名「メゾン」の代表格。アイコニックなスカーフは世界のレディーの愛用品です。 俳優・歌手のジェーン・バーキンとの偶然の出会いから生まれたバッグ「バーキン」や、モナコ大公妃だったグレース・ケリーが有名にした「ケリー」などの名品バッグは、いまも憧れの的です。 手袋やベルト、財布などのレザーアイテムの充実ぶりは、もともと馬具工房から始まった歴史を思い起こさせます。 アルチザン(職人)によるものづくりを重んじる価値観がブランドを支えています。 6代にわたるファミリー企業として経営の独立性を保っているのも「エルメス」の特質です。サステナビリティー(持続可能性)を重視し、原材料や水、エネルギーの消費をできるだけ抑える仕組みでアトリエを運営。皮革製品の専門家を育てる学校も運営しています。
■秋冬のキーカラー、ブラウン オンもオフも自在に
2024-25年秋冬コレクションでは強みのレザーやカシミアなどの極上素材を用いた装いをそろえました。 ぬくもりを印象付けるブラウンをキーカラーに据えて、マスキュリンとフェミニンが同居するようなルックを提案。足元には凜々しいブーツを迎えて、インディペンデントな女性像を描き出しています。 彩りがダークになりがちな秋冬ルックでも、温かみを宿したブラウン系を使えば、ヒューマンな雰囲気の装いに整えられます。スタイリングのコツは濃淡や素材感の違いを生かした組み合わせ。ブラウン系は出番を選ばないから、オンとオフをまたいだ自在の着こなしも可能です。 「エルメス」という最高の教科書にならって、この秋冬はブラウンを着こなしのレパートリーに加えてみてはいかが。 文:宮田理江(ファッションジャーナリスト)
宮田理江
トレンド情報や着こなし解説、コレクションリポート、スタイリング指南をメディアや個人サイトで幅広く発信。異なるテイストのミックスコーディネートが得意。自らのテレビ通販ブランドを持つ。ディレクション業務、イベント登壇もこなす。毎日ファッション大賞選考委員。 ※この記事は「THE NIKKEI MAGAZINE」の記事を再構成して配信しています。