全国模試1位「旭川の神童」率いるチームはなぜ伝説の高校生クイズで敗れたのか?…クイズ王・伊沢拓司を追い詰めた“ある公立校”「その後の物語」
旭川東が優勝だったら…「QuizKnock」は生まれていない?
良くも悪くも多感な10代の時期から多くの職業に触れ、さまざまな人間との交流チャンスがある東京の超進学校と、北海道の極北の地で育った学生。そもそも考えるスタート地点が違うのだ。重綱は言う。 「もしあの時、旭川東が『高校生クイズ』で優勝していたとしても、僕らからいまの『QuizKnock』のようなものは生まれていないと思うんです。結局、最後は行動力なんですよね。高校生まで公立校で、型にはまって生きてきて、周りも同じような奴らばっかりで。 まして地方のトップ校なんて、余計そうなんですよ。同じような偏差値で、同じような考えで集まってくる。そりゃみんな仲良くはなるんですけど、その『型』を外れる勇気を持てるやつはなかなかいない。発想はあっても、その『型』から外れることが、なかなか僕にはできなかった」 そしてそれは、塩越という天才にとっても同じだったのかもしれない。 だからこそ、「伊沢は本当にすごい」と2人は声を揃える。 「いまのQuizKnockの活躍を見て『伊沢、同じようなこと考えていたんだなぁ』と思うことはあります。でも、それを考えるのと実際に行動に移すのじゃ、天と地の差がある。いまではもう一ファンとしてテレビで見るだけですけど、本当に尊敬しますよ」(重綱) 塩越は東大在学中に予備試験を突破し、卒業直後に司法試験に合格。現在は高校時代からの夢を叶え、弁護士として大手法律事務所で働いている。重綱も「高校時代がとんとん拍子に来過ぎて、就活ではだいぶ苦戦しました」と苦笑しつつも、現在は大手メディア企業でWeb広告の商品企画担当として活躍している。 2人とも、いまや「クイズ王」となった伊沢とは、活躍のフィールドは少し変わった。 テレビやメディアで日々、姿を見せる「芸能人」になった伊沢と比べれば、重綱の言葉を借りれば、2人ともが「『型』を外れず」に人生の歩を進めている……ということになるのかもしれない。 ただ、それはどちらが良いということでもないだろう。 人生は、クイズのように答えがあるわけではないのだから。
(「Number Ex」山崎ダイ = 文)
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