穏やか皇子は裏では狼!?空回りおもしれー女とワケアリ男のほっこり政略結婚『狼皇子と嘘つきな結婚』【書評】
ここでは裏目に出てしまったものの、アイリンは健気で前向き。圧倒的に光属性だ。そしてルスランも、アイリンに最初見せていた「穏やかな夫の顔」こそ嘘のものだったが、アイリンへの優しさは嘘ではない。 激ヤバなところだけ紹介してはアイリンがふびんなので、もうひとつ、家族との確執を乗り越えようとするシーンも紹介したい。アイリンの継母である王妃は、アイリンの母への感情からアイリンを疎み迫害している。その関係は、ルスランのもとに嫁いでも変わらなかった。祖国にいた時は立ち向かえなかった相手に、アイリンは勇気を出して自分の意志を伝えてみせる。それができるようになったのは……きっと、ルスランとの出会いのおかげなのだろう。
一生懸命なおもしれー女ヒロインに、嘘つきだけど優しさは嘘じゃないワケアリヒーロー。白泉社の少女漫画から摂取したい栄養もりもりのふたりだ。アイリンが予想外の行動をとるたび、ルスランのピアスが「シャラン」と鳴るたび、胸がきゅんとする。ふたりの間にある気持ちは、まだ恋ではない。いつしか恋を自覚して、「嘘の結婚」が「本当の結婚」になる日までを追いかけたい。 文=青柳美帆子