穏やか皇子は裏では狼!?空回りおもしれー女とワケアリ男のほっこり政略結婚『狼皇子と嘘つきな結婚』【書評】
「裏表があるキラキラしたワケアリ男」は好きですか?であれば、音久無(おと・ひさむ)『狼皇子と嘘つきな結婚』(白泉社)のヒーロー・ルスランにぜひ出会ってほしい!
アユス王国の王女・アイリンは、傾いた母国を救うため、エレン帝国の皇子・ルスランに嫁ぐことになる。文字通りの政略結婚だ。ルスランは穏やかで優しい夫だが、アイリンと初夜を迎えることはなかった。アイリンは王女ではあるものの、実母はすでに亡く、現在の王妃とその娘たちには迫害されている。帰る場所もないアイリンの唯一の役割は、両国を結びつけること――。そう思い詰めたアイリンの必死の行動は、空回りしたりかわされたり。それでも、アイリンの思いに寄り添ってくれるルスランに心を寄せつつあるとき、ルスランの「真の顔」が明らかになって……!?
本作はいま女性向けで流行している(というか、もう定番ジャンルとなっている)政略結婚もの。政略結婚ものの魅力は、形の上でだけ夫婦になったふたりが、どう本当のパートナーになっていくかのもだもだ感とじりじり感にある。かつ、本作はタイトルにもあるように「嘘つきな結婚」――どちらかに秘密があり、その秘密が明らかにならないと恋愛関係が真に進まなそうだ。 ルスランの秘密は、特殊部隊「狼」のトップであること、穏やかで優しいのは猫被りだったということ。それに加えて、まだまだ秘められた何かがありそう。「狼皇子」の「狼」は、「狼少年」、つまり嘘つきを暗示しているのでは……とついつい深読みしてしまう。
とはいえ、本作の読み味は、あたたかくて癒される。それはひとえに、ヒロイン・アイリンの人柄によるものが大きい。思い余ったアイリンは、ルスランに夜這いをかける。しかしその化粧は激ヤバ。ルスランを興奮させるどころか、銃をつきつけられる始末だ。めちゃくちゃインパクトがあり、筆者は何度かWeb広告で出合っている。いまこの記事を読んだ方の中にも、「見たことあるかも!」と思う人はいるのでは。1話で一番インパクトがあるシーンだ。