道路は隆起、ひび割れ、陥没…高齢の祖父母を連れ、向かった避難先で起きた想定外のこと
携帯用トイレは持って来ていたのに
津波警報が発表されたのは地震から12分後の16時22分。それから待ったなしで、着の身着のまま、車での避難ではあったが、備え万全のまえだ家は携帯用トイレを持ってきていた。だが高台の広場であった避難所にはトイレはなかったのだ。 実は、まえださん達が持ってきた災害用トイレは、便器に袋をかぶせて用を足した後に、凝固剤で固めて捨てるタイプ。便器がないと、用はたせないものだった。 いつ、警報が解除されるかもわからず、また、未曽有の大地震という非常事態だけに、まえださんたちだけでなく、他の避難してきた方々もみな、「野に帰った」という。 津波がいつ来るかわからない不安な状況の中、まえださんは何を思い、どんな行動をとったのか。リアル漫画体験記と、また避難に車を使うべきかどうかを、まえださんのインタビューでご紹介する。
避難パターンはいくつか想定しておく
――避難に車は使わないのが鉄則と聞いていても、「歩けない」家族がいた場合、選択の余地がないように思いました。荷物や家族、住んでいる地域など、車を使う、使わないはどう判断したらよいでしょうか。 「私達の場合は高齢の祖父母もいるし、高台まで遠いし、人口も少ないしで、避難に車を使う以外の選択はありませんでした。だからこそ悩まず、素早く避難できたと思います。 やはり自分の家族の状況や住んでいる地区を把握しておくことが一番大事だと思います。 でもいざ地震が起こったとき、道路状況が悪くて車が使えないなど、想定外のことも起こるので、いくつか避難パターンをイメージしておくといいのかもしれません」 ◇まえださんの住む地区は、その後21時半頃「津波は大丈夫らしい」となり、自宅に帰ることができた。1月の厳しい寒さの中、自宅から離れた避難場所までの往復は、もし車でなかったら、高齢の祖父母にとっては生死にかかわる負担になっていたかもしれない。 実は筆者は過去、自家用車を水没させたことがある。 水かさが増していることに気づかずに、下り坂に車で突っ込んで、最下部で車が動かなくなったのだ。 水が車中に入り、足首まで水につかりながらも、なかなか車のドアを開けて逃げる覚悟ができなかったが、結局最後は、腰まで水につかって逃げ、消防車に助けていただいた。まえださんに言うと 「え、びっくりした! ものすごい経験をされているんですね……! でも危ない目に遭ったら、無意識に命優先の行動をとると思います。 命がなければ家があったって車があったってもう意味ないですから」
まえだ 末吉、FRaU マンガ部