戦場カメラマン・渡部陽一「過去の戦争も今の生活につながっている」肩の力を抜いて戦争に向き合う基本 #戦争の記憶
8月15日の終戦記念日で、戦後78年を迎える日本。ロシアによるウクライナ侵攻など、世界の戦争や紛争について日々報じられる一方で、日本人にとって戦争は遠い国の話であり、過ぎ去った過去の出来事だととらえている人は少なくないだろう。戦場カメラマンの渡部陽一さんは「現在進行形の戦争は当事国だけの問題ではなく、直接、戦闘を体験した世代が減りつつあっても、私たちの足元ともつながっている問題」と語る。いま私たちは過去と現在の戦争とどう向き合い、平和につなげていくべきなのか、渡部さんに聞いた。(聞き手:荻上チキ/TBSラジオ/Yahoo!ニュース Voice)
「世界各国はすべてつながっている」戦地になっている国だけが戦争当事者ではない
――渡部さんは、2022年のロシアによるウクライナ侵攻が始まる以前から、何度もウクライナを訪れていらっしゃるそうですね。 渡部陽一: ウクライナの内戦期を含めると12回、訪問し取材を続けています。ウクライナ戦争が始まってから1年半近くが経過していますが、依然、市民が攻撃の対象になっていて、事実上の虐殺が繰り返されている現状は、いつ足を踏み入れても確認できます。 ――ウクライナに限らず、さまざまな戦地に赴く中で、渡部さんが気づいたことはありますか。 渡部陽一: 戦争が起きると、一部の地域ばかりがフォーカスされますが、突発的にそこで起こったものではなく、5年前、10年前、20年前の世界中の情勢や経済の流れというものが血流のようにうなって、そこで表面化した結果だと思うのです。 今、ウクライナ戦争においても、政治、経済、外交、環境、資源の問題で実は他の国々ともつながっています。代理戦争という言葉がここ数年よく使われていますが、戦争を起こしている当事国だけではなく、その戦争によって、利益を得る別の国の人たちがいるということです。その国の人たちとの外交の関わりで代理的に戦いが引き起こされているという構図が、戦争が起きているさまざまな国で見てとれます。