戦場カメラマン・渡部陽一「過去の戦争も今の生活につながっている」肩の力を抜いて戦争に向き合う基本 #戦争の記憶
自分の安らぎや温かさの気持ちが「平和」へとつながっていく
――戦争のない平和な世界にしていくために、渡部さんは何が必要だと思いますか。 渡部陽一: 僕は世界中を回っていますが、それぞれの人の日常を見ていくと、リスペクトを持ってジャンルやさまざまな線引きに関係なく、相手の暮らしや思いにお互い寄り添っていたり、寛容の気持ちを持っていたりします。どの国の人たちも「どうしてこんなに優しいんだろう」と思える人たちばかりです。旅行や仕事、留学で外国へ行った方も同じように感じたことがあるのではないでしょうか。日本にたくさん来ている外国の方も同じような思いを持っています。 そうした、それぞれの気持ちや言葉、思いというものが重なっていくと、やわらかい気持ちになる。やわらかい気持ちになると、自分自身が立ち止まることができたり、いろいろな動き方ができて温かい気持ちになれて、ゆったりと過ごすことができますよね。 このやわらかい寛容の気持ちを日常の中でどのように整えていくかというと、僕は自分のやりたいことをやることだと思うんです。みんな時間や仕事、勉強に追われている。でも、「本当は僕はこれが好き」「私たちは本当はこれをやってみたい」というようなことをどんどんやってみることが、自分のライフスタイルを地にしっかりとつけることにつながっていく。それは自分の好きな安らぎや温かさの気持ちの安心感、安定感を整えられる要素だと思っています。 例えば、「忙しい中でも日曜日の30分間だけは自分の好きなことをやる」とか。これを生活のリズムに組み込んでいけば、自分のスタイル、安心できる環境を自分の中に整えることができる。これは自信へとつなげていく力になると僕は感じています。 平和について考えるというのは、ただ戦争、戦闘について学ぶだけではなくて、いろいろなルーツを持つ人と話してみるとか、そもそも自分自身を大事にして、自分が平和を大事にするという感覚を確認することも含まれている。それもすごく重要なんだということに気づいてほしいですね。 ----- 渡部陽一 1972年、静岡県生まれ。戦場カメラマン。明治学院大学法学部在学中から世界の紛争地域などの取材を続け、これまで130の国と地域を訪れカメラに収めている。穏やかな語り口が人気を呼び、ラジオ、テレビ番組等に多数出演。著書に『戦場カメラマン 渡部陽一が見た世界』(くもん出版)、『戦場カメラマンの仕事術』(光文社)などがある。 文:田中いつき (この動画記事は、TBSラジオ「荻上チキ・Session」とYahoo! JAPANが共同で制作しました) 「#戦争の記憶」は、Yahoo!ニュースがユーザーと考えたい社会課題「ホットイシュー」の一つです。戦後80年が迫る中、戦争当時の記録や戦争体験者の生の声に直接触れる機会は少なくなっています。しかし昨年から続くウクライナ侵攻など、現代社会においても戦争は過去のものとは言えません。こうした悲劇を繰り返さないために、戦争について知るきっかけを提供すべくコンテンツを発信していきます。