西アフリカ・ベナンの布“バティック”で、職人も着る人も笑顔にしたい 女性起業家の進む道
続ける覚悟があるのか?自問自答し開業へ
学びの多いベナン生活も終わり、日本へ帰国。 模索していた国際協力の形が見えてきた。その国に対して“してあげる”という支援のような関わり方は違う気がした。でも『どこで生まれても笑って生きられる世界に近づけたい』という思いは、ベナン渡航前よりも強く意識していた。 「”発展=欧米化”ではない形があってもいいんじゃないか?と考えるようになりました。実はベナンでも、バティックを纏う人が減っていたんです。経済発展が進むとともに、テイラーメイドが中心の文化からTシャツやデニムといった服を着るようになっていました。欧米の暮らしに均質化されていくベナンの未来を感じて、とても淋しかったのです。その地域に昔から根差し紡がれてきた文化が、暮らしのなかに生きていることが、笑って生きるということの秘訣でもあるのかもしれないと感じて、そのために私ができることをやっていきたいと思いました」 物質的、経済的に発展していくためのアプローチは、世界中の人たちがやってくれる。沖田さんは、発展した未来にも、その地で繋がれてきた、その地らしい文化や伝統が続き、今溢れている笑顔が繋がるために出来ることをしたいと思ったのだ。 そうして生まれたのが、アパレルブランド設立の構想だった。 当時大学4年生だった沖田さんは、国際協力でお世話になった方々などに自分の構想を伝えて回った。自身でもワクワクする構想に、周囲の反応も良かった。すぐにでも起業して取り掛かりたい!そんなふうに思った矢先、ある1人の人物から「続ける覚悟がないならやらないほうがいい」と厳しい言葉が飛んできた。 「始める、というのは善意です。でも続けられないと、迷惑になる。現地のベナン人は私の事業を始めるために、労働力や資源を投下することになるが、頓挫すればマイナスになる。続ける覚悟がないならやらないほうがいいと言われたんです。ハッとしましたね」 もし数年後にもブランドへの気持ちを持ち続けられたら、やり続ける覚悟があるということではないか。一度、会社員として働くことを決意した。そして働くことを知るところから始めた。