“アメカジブーム”の終焉… 「若年層の知名度が低い」大手販売店の相次ぐ買収も“当然の結果”か
中小企業コンサルタントの不破聡と申します。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、「有名企業の知られざる一面」を掘り下げてお伝えしていきます。 1990年代のアメカジブームを支えたアパレルショップ「ライトオン」と「マックハウス」が、TOBによって相次いで買収されることとなりました。 2社ともにブーム終焉という大波が去ったことが業績低迷の一番の要因ではあります。しかし、過去を振り返ると経営の問題点も浮かび上がります。
まさかの「9割引」で公開買付
驚くべきことに、マックハウスのTOBの買付価格は32円。TOBを公表した前日終値330円に対して、9割以上も安い価格に設定されています。 マックハウスは「東京靴流通センター」などを展開するチヨダの子会社。チヨダが6割超の株式を保有しています。今回、マックハウスを買収する主体者はアパレル物流大手ジーエフホールディングスで、チヨダはすべての株式を売却すると見られています。当然、この価格で株式を売却するチヨダ以外の株主はいないでしょう。このTOBはチヨダの投げ売りとも言えるもので、マックハウスを早く何とかしたかったという思いが伝わってきます。 それもそのはず。マックハウスは6期連続の営業赤字。今期も赤字を見込んでいます。しかも、営業キャッシュフローが4期連続でマイナス。4期連続は極めて稀で、オーディオ販売のオンキヨーホームエンターテイメントは、5期連続でキャッシュフローがマイナスとなった末に破産しました。
「借入すら困難な状況」なのか
手持ちの現金の減少するスピードも速く、2024年8月末時点の現金及び預金は7億2100万円。1年で半分以下に縮小しています。なお、2023年2月末時点では、27億円を超えていました。 2025年2月期第2四半期累計は2割もの減収。5億円の営業赤字を出しています。 しかしながら店舗数は270と多く、従業員に支払う人件費も膨大。そうかといって不採算店舗を無理に閉鎖しようとすれば、現状回復費などで手持ちの現金が消えてしまいます。 更にマックハウスはこれだけの窮地に陥りながらも、金融機関からの十分な借入を行っていません。借入すら困難な状況にあると見ることができるのです。