家族葬なんてしなければ…年金月6万円だった享年85歳父の「葬儀」を、世帯年収500万円の50歳娘が後悔しているワケ【FPが解説】
一昔前までは、盛大に営むこともめずらしくなかった葬儀。しかし、現在は家族葬、一日葬、直葬など、葬儀の簡素化が進んでいます。こうした小さな葬儀には費用が安いといったメリットがある一方で、後悔するケースもあるようです。本記事では、Aさんの事例とともに、後悔しない葬儀について、社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が解説します。 【早見表】年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
増える家族葬、葬儀の簡素化
一般的に、葬儀は亡くなった人の冥福を祈り、弔う宗教的儀式を指し、死後安らかに眠れるように願う儀式です。また、遺族や親族、友人、近所の人、会社の人などは亡くなった人の冥福を祈り、最期のお別れをするものです。 亡くなった人と親交が深かった人にとっては、最期のお別れをしたいと願う人が葬儀に参列します。しかしながら、コロナ禍では大々的に葬儀を執り行うことが叶わず、淋しい見送りをせざるを得なかった人が多くいたことは周知の事実でしょう。そしていま、コロナの影響がなくなっても、ごく近しい人のみで行う家族葬等が増えているようです。 いざ、自分の親が亡くなり… 85歳の父親を亡くしたAさんは、相談に行った葬儀屋で、いまは家族葬が増えていて葬儀代は一般葬より安く抑えられると聞きました。 平成29年の公正取引委員会の「葬儀の取引に関する実態調査報告書」では、葬儀の種類別の年間取扱件数の増減傾向については、「一般葬」が年間取扱件数全体の63.0%を占めている現状において、増加傾向にある葬儀の種類については、「家族葬」が51.1%、「直葬」が26.2%、「一日葬」が17.1%であったのに対し、減少傾向にある葬儀の種類では一般葬、社葬となっています。 コロナ禍前の段階での調査であるため、コロナ禍では密を避けるため家族葬等が増え、コロナ後も同様の傾向であるということが想像できます。一般葬が減少し、家族葬など小規模な葬儀が増加傾向にあるなど葬儀の在り方について変化が生じているようです。 50歳のAさんは一人娘です。自分にも娘が1人います。パート勤務のAさんの世帯年収は500万円程度。子どもが大学受験とあって、塾代、受験費用から、入学してからの授業料等、これからかかる教育費を考えると、葬儀代にかける費用は少ないほうが助かることはいうまでもありません。 父の現役時代は自営業で年金が少なく、廃業してからは年金と貯蓄を切り崩して暮らしていたため、貯蓄はほとんど使い果たしていました。年金は自営業のため、月6万円程度で築50年の小さな持ち家があったため、ぎりぎり生活が成り立っていたという状態。家は駅から離れているため、評価額は低く、自宅を壊す費用等を考えると、相続するにも負担になりそうな気配です。 Aさんのお財布事情等もあり、生前の父が「自分に万一のことがあったときには無理に葬儀をやることは望んでいない」といってくれたことも後押しとなり、家族葬を選びました。