サントリー次期社長は「創業家出身のプリンス」 新浪氏が「ノブ」と呼ぶ鳥井信宏氏に託した課題
■「日本で絶対に1番になる」 新浪氏が新社長の鳥井氏に託す課題は、国内酒類事業の成長だ。 サントリーはウイスキーなどの蒸留酒で国内シェア首位、世界でも5位の強さを見せる。しかし酒類全体では国内3位(販売数量ベース、イギリスの調査会社ユーロモニター調べ)にとどまる。 一方、世界で確固たる地位を築いている酒類メーカーはどれもが自国で圧倒的な強さを誇る。サントリーはイメージ通りのグローバル企業になりきれていないのが現状だ。
「サントリーが目指すのは真のグローバルカンパニー。総合食品・酒類メーカーとして、日本で圧倒的に、絶対に1番になる」。新浪氏の国内にかける想いは強い。 鳥井氏の新社長としての試金石となるのはビール事業だ。国内はビールの消費者が多い。日本1の酒類メーカーを目指すなら、この事業の成長は欠かせない。 サントリーとして格別の思い入れもある。「60年以上前に国内大手で最後発のメーカーとしてビールに挑み、苦しい中でがんばってきた。ビール事業はサントリーの魂だ」(鳥井氏)。
国内ビール事業が初めて黒字になったのは、参入から約45年経った2008年。プレモルのヒットが貢献した。 だが、現在のサントリーは、ビールと発泡酒の「ビール類」で国内シェア3位に甘んじている。 2023年にアサヒビールが「スーパードライ」のみで7131万ケースを販売したのに対し、サントリーはノンアルコールビールを含むすべてのビール系飲料ブランドを合計しても6840万ケースだった。ビール王者のアサヒの背中は遠い。
シェア拡大のためには、プレモルより価格が低く、市場で圧倒的に販売量が多いスタンダード(標準価格帯の)ビールの領域で強いブランドを持つ必要がある。 競合のアサヒはスーパードライ、キリンビールは「一番搾り」、サッポロビールは「黒ラベル」といった歴史ある看板ブランドを持っている。サントリーには長年それが欠けている。 ■勝負の場はスタンダードビール 目下、サントリーが拡販を急ぐのは、昨年4月に発売したスタンダードビール「サントリー生ビール」だ。