サントリー次期社長は「創業家出身のプリンス」 新浪氏が「ノブ」と呼ぶ鳥井信宏氏に託した課題
国内外で飲料事業を展開するサントリー食品インターナショナルが2011年に発足した際、同社の初代社長に就任。2013年にグループで初めて上場し、上場企業とはなんたるかを知る新浪氏には相談しやすかったという。 逆に新浪氏が物議を醸す発言で世間を騒がせたときには、鳥井氏が苦言を呈しながらも励ますような関係性を築いてきた。 ■新浪時代は海外事業拡大の10年 鳥井氏を育て上げた新浪氏が、コンビニ大手・ローソンの会長を経てサントリーHDの社長に就任したのは、2014年10月。創業家以外の人物が社長になるのは初めてのことだった。招聘したのは前HD社長、現会長の佐治氏で、新浪氏へ海外の一大プロジェクトを託した。
同年5月、サントリーはアメリカの蒸留酒大手ビーム(現サントリーグローバルスピリッツ)社を1.6兆円で買収。ウイスキー「ジムビーム」や「メーカーズマーク」などの強力なブランドを獲得した。買収の5カ月後に社長となった新浪氏は統合作業に全力をあげて取り組んだ。 就任当時は現地社員と角突き合わせることもあったが、外部で培った持ち前のスピード感で、国内外の人材交流を活発にするなど社内改革を進めた。 結果、海外事業は飛躍的に成長した。サントリーHDの売上収益に占める海外比率は、新浪氏就任前の2013年12月期が約25%。ビーム社の買収効果が上乗せされた2014年12月期は約36%だった。それに対し、会計基準の違いはあるが、直近の2023年12月期には約50%にまで上昇した。
新浪氏は大型買収と統合を乗り越えて、強い組織を作ったと自負する。一方で、社長としてやり残したことは海外事業に多いという。 サントリーが目指すRTD(Ready to Drinkの略語。缶チューハイやハイボール缶など、開けてすぐに飲める飲料)での「売り上げ世界1」や、人口増が続くインドでの十分な事業拡大などは、社長在任中に達成しきれなかった。今後は会長の立場で海外事業のさらなる拡大を牽引していく。