「ハリー・ポッターと賢者の石」日本語版出版から25 年 翻訳者・松岡佑子さんインタビュー 「ここまで惚れ込んだ作品、他にない」
「ハリー・ポッター」シリーズの5つの魅力
――改めて、「ハリー・ポッター」シリーズの魅力とはなんだと思いますか? いつも用意している答えがあって、この物語に関しては5つあると思っています。物語の壮大さと、人物が生き生きとしていて感情移入できるようなキャラクターの描き方。それから魔法の小道具。これは楽しいですよね。そしてユーモアのセンス。これはもう物語の随所に散りばめられています。最後のひとつは、読後感の良さ。読み終わったときに、嫌な感じが全然残らない。次はどうなるんだろうという興味と、「ああ、よかった」というほっとした感じ、温かいものが残るんです。各巻ともね。今でも、いい本だなと思います。 ――魔法使いになってみたいとは思いますか? なってみたいとは思わないですね。私はハーマイオニーのように勉強が大好きですが、魔法はやっぱり勉強しないとできないと、この本でよくわかりました(笑)。魔法というのは、どこかからヒューっと湧いて出てきたり、鼻の曲がったおばあさんがカエルの目玉を煮ていたりするような、そういうものではないんだなと。新しい魔法のイメージが私には定着しました。 魔法じゃないとできないような離れ技がいろいろあって、「姿あらわし」と「姿くらまし」という魔法(瞬間移動の魔法)を使ってみたいと思ったんですけど、あれは難しいんですよ、17歳以上にならないとできないんですよね。でも、それができたら、今住んでいるスイスから日本に、あっという間に来られるんじゃないかと思っています(笑)。 ――これからはどんなことに取り組んでいかれようと考えていますか? 私は翻訳者ではありますが、J.K.ローリング以外の方の作品は多くは訳していないんです。以前、一度、ご依頼いただいたことはあったんですけど、とても忙しいときで残念ながらお断りしたことがあります。今は、他の出版社からも依頼があればやりたいなと思います。キュウキュウと忙しくはしたくないんですけれども、本当に気に入った本を訳すという仕事をやってみたいですね。翻訳は楽しい仕事なので続けていきたいです。今の夫(オーストラリア人)は、翻訳ではなく自分で本を書いていて、先日、歴史の本を出しました。そのうち、翻訳してくれって言われそうです(笑)。歴史専攻でしたけど、相当勉強をしないと訳せないと思うので、自信はないですね。あとは、スイスの山に住んでいるので、山歩きをするなど、スイスでの暮らしを楽しみたいと思います。