多摩地区住民約790人から「発がん性物質」が検出された衝撃…「家の水道水が危ない」京大准教授が警告する理由
■「検査費1万円超」では負担が大きすぎる ただ、ようやく日本でも個人でも検査できる道が開かれようとしています。 多摩地域の団体などが臨床検査会社に打診して、検査会社のほうも体制を整えようとしてきました。そのなかで、東京の病体生理研究所、LSIメディエンスといった臨床検査会社もPFAS血液検査を始めました。クリニックや病院によっては個人の検査や相談を受け付け始めています。 ネックは料金でしょう。健康保険の対象ではなく、いくつかの事例を聞きますと、1万円を超していて、これではちょっと負担も多く広がりにくいでしょう。検査が普及していけば検査費用も下がっていくと考えられます。 汚染のある地域で費用をサポートする自治体(岡山県吉備中央町、千葉県鎌ケ谷市)が出てきていますが、その後の相談対応も含めた仕組みが重要となるでしょう。 ■予防の先送りは本当に「科学的」なのか 日本の食品安全委員会は食品を通じてPFASを摂取した場合の発がん性を含む様々な毒性について、どのくらいの量のPFASを摂取すると、そのリスクが高まるかといった健康影響の評価を進めてきましたが、2024年6月にまとめられた評価では、はっきりしない点があるからという理由で近年行われた疫学調査の結果は採用されませんでした。 確実な関係が見られるまで研究を待ち続けることは一見科学的と思えるかもしれませんが、どのような研究でも100%確実なものはありません。不確実な状況も考慮して健康への影響を予防していくことが健康リスクに対処するための科学的な方法といえます。 今後、さらに調査や研究が進められることで、新たな健康への影響が明らかになっていくことでしょう。これまでも当初は安全とされていた摂取量が、研究が進む中で引き下げられてきました。 PFASの影響が広がってしまう前に、リスクを予防するための対策を進めていかないといけないと私は考えています。 ---------- 原田 浩二(はらだ・こうじ) 京都大学大学院医学研究科准教授 専門は環境衛生学。京都大学大学院医学研究科助教、講師をへて2009年から現職。2002年に京都大学で小泉昭夫教授(現・名誉教授)の調査チームの一員としてPFAS汚染問題に取り組み、近年は国内各地の市民団体と協力しながらPFAS汚染の調査・研究に取り組む。 ----------
京都大学大学院医学研究科准教授 原田 浩二