多摩地区住民約790人から「発がん性物質」が検出された衝撃…「家の水道水が危ない」京大准教授が警告する理由
■くっつきやすく、排出されにくい また、川の水は水道水として使われるので、水道水にも混じることになるし、土壌中に残ればゆっくりと地下水に浸み出して、井戸水を汚染することにもつながっていきます。 そもそも多くのPFASは環境中では薄く広がり、ある一定の大きさの塊になっていないので、目に見えないし、臭いもしません。だから、知らず知らずのうちに私たちの身体の中に侵入しているかもしれないのです。 厄介なことに、いくつかのPFASは一度摂り込まれると身体の血液成分にくっつきやすく、なかなか外に排出されません。 いつの間にか身体の中に蓄積されていき、それが私たちの健康に影響があるのではないかと言われています。 ■WHOの専門機関「発がん性がある」に引き上げた 実際、2023年11月にはインパクトのある発表がありました。 WHO(世界保健機関)の専門機関である国際がん研究機関(IARC)が、PFASの一種であるPFOA(ピーフォア)の発がん性を「可能性がある」から2段階引き上げ、「発がん性がある」と分類したのです。 発がん性の可能性は以前から指摘されていましたが、発がんにつながるメカニズムが確かであると専門機関が評価したわけです。 このほか、脂質異常症や甲状腺ホルモンへの影響、子どもの出生体重の低下傾向、それに免疫力が低下して感染症にかかりやすいといった健康への影響が、PFASの調査や研究から報告されています。 日本で行われている、化学物質の子どもへの影響を調べるエコチル調査でも子どもの染色体異常と関連するかもしれないとする結果が報告されました。 ただ、その全体像はまだまだわかっていない状況で、今後さらに新たなリスクが明らかになるかもしれません。
■体内にたまっている量を知る方法 人ひとりがどのようなものから化学物質を摂取しているか、調べることは簡単ではありません。特に様々なものに使われているPFASについて、飲料水から食事、日用品、それに空気までを個人ごとに調べることはおそらく無理でしょう。 一方で、実際に個人ごとに摂取している量を知るために有効なのが血液検査となります。 PFASが様々なものから身体に摂り込まれると、水に溶けやすく吸収される性質から最終的に血液に入ります。そこで血液中のPFASの濃度を調べることで、血液を採取した時点で、身体の中にたまっているPFASの全体量を知ることができると考えられるのです。 血液からPFASを抽出して分析装置で測定すると、PFASの量を1ml当たりng(ナノグラム=10億分の1g)の単位で検出することができ、それがPFASの「血中濃度」となります。 ■2000年代初頭には国内で検出されていた 03年と04年に、京都大学の研究チームで秋田県、京都府、大阪府、山口県、高知県、沖縄県といった国内10の地域に住む成人男女の血液を調べたことがあります。 男女各10人ずつ、計200人の血液中のPFOSとPFOAを分析しました。 すると、PFOSはすべての地域で平均的には20ng/mlで検出されました。地域的な差はこのときは大きくはなく、多くの地域でPFOSが同様に広がっていたと考えられます。 その一方で、PFOAに関しては京都、大阪、兵庫エリアが高濃度で、他の地域を上回り、10ng/ml以上という結果となりました。