突然かかってきた税務署からの電話…「答え」を間違えた人が陥りやすい「落とし穴」とは
累計188万部の大人気シリーズ『おとなの週刊現代』が大幅リニューアル!週刊現代で大反響だった記事の中から、相続や在宅介護など、「死後の手続きと生前準備」にまつわる記事を、加筆のうえ、ピックアップ。 【マンガ】「憧れのタワマン生活」が一転…!残酷すぎる「格差の現実」 〈第1部 知らないと損する死後の手続きの新常識〉、〈第2部 今日から始める生前準備のすべて〉、〈第3部 身の回りの整理整頓。人生の最期を考える〉の三部構成からなる『おとなの週刊現代 2024 vol.4 死後の手続きと生前準備』 (講談社MOOK) より一部抜粋・再編集して、人生の最期で失敗しないためのノウハウをお届けする。 『「親が認知症になったら家を売ろう」そう考えていると家族で揉めて「大失敗」に陥る』より続く
「ふつうの人」が税務調査に入られる恐怖
「こちらは東京のA税務署です。相続税のことでうかがいたいことがありまして、来週の水曜日に調査にうかがいたいのですが、その日はご在宅ですか」 東京23区内に暮らす栗田秀明さん(仮名・69歳)のもとに税務署から突然の電話があったのは、3年前のことだった。 電話口の声はこちらに有無を言わせない事務的かつ冷たい調子で、「税務調査」に入ることを告げてくる。栗田さんはその冷ややかな物言いに、唯々諾々と従うことしかできなかった。話を終え受話器を置いた手には、汗がにじんでいた―。 栗田さんの父親が93歳で亡くなったのは、この電話からさらに2年ほど前のことである。母親は亡くなっていたので、父親の財産はすべて栗田さんが相続することになった。 父親の家は埼玉県内にあった。比較的大きな駅が最寄りの一戸建てで、評価額は土地もあわせて4000万円ほど。くわえて、預金が3000万円ほど残されていた。
忘れた頃に鳴る電話
現役時代の父親は上場企業でそれなりに出世しており、栗田さんが予想していた以上に資産が遺されていた。 「合計で7000万円ほどを相続することになり、もともと知り合いだった税理士に相談しながら自分で申告の手続きを始めました」(栗田さん) 相続のために親の財産を整理するなかで、栗田さんは実家の引き出しから思いがけないものを発見する。それは、栗田さん自身が名義人となった口座の通帳だった。 預金額は500万円ちょうど。父親の口座から栗田さん名義のその口座に、1年に一度、50万円ずつのおカネが10回に分けて振り込まれている。栗田さんが続ける。 「父が私の名義で預金をしていたようなんです。いわゆる『名義預金』というやつですね。父がどういうつもりで預金をしていたのかはいまもってよくわかりません。私になにかあったときのためなのか、それとも相続税対策だったのか。 安直だったとしか言えないのですが、私の名義の預金だし、このおカネに相続税はかからないだろうとタカを括って、この口座のおカネは相続財産として申告しなかったんです」 相続税の申告期限は、被相続人の死を知った日の翌日から10ヵ月だ。栗田さんは期限の少し前までに申告を終えた。 それからさらに1年ほどが経過したが、とくになにごとも起きなかった。相続のことは全部終わったと、栗田さんはすっかり安心していた。そこにかかってきたのが冒頭の電話だ。不安と心配がじわじわと栗田さんをむしばんでいった。 「もちろん相談に乗ってくれた税理士にも相談しましたが、そのときになって『俺は相続業務は専門じゃなくて、あまり詳しくないんだよな……』と、いまさら頼りにならないことを言う。私は『もしかするとあの名義預金が原因かもしれない』と思っていたのですが、それを自分から言い出すと大変なことになるんじゃないかと思ってなにも言えずにいました。 電話がかかってきてからというもの、不安でよく眠れませんでした。税務署は『相続税について聞きたい』の一点ばりで、詳しいことを教えてくれないですしね。『悪いことをしているはずがない』と自分に言い聞かせるのですが、いったいなにを聞かれるのか見当もつかず……」