NY市場でナスダック急落 日本株への影響はどうなる?
8日の米ニューヨーク株式市場は、主要銘柄でつくるダウ工業株平均が大幅続落し、ハイテク株の比率が高いハイテク市場も急落しました。このナスダック下落をどう見るか。日本株への影響はどうか。第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミストに寄稿してもらいました。 【グラフ】給付金は効果あり? 街角景気が急改善 カギ握る倒産件数
米債市場、社債市場への影響は軽微
米ナスダックは9月4日~8日の3営業日で約▲1209ドル、約10.0%下落しました。コロナ禍発生前の2月19日の高値9817.18ポイントをなお大幅に上回っているものの、3月下旬に大底を付けた後、これまでほぼ一貫して上昇してきただけに、2桁%の下落は潮目の変化を感じさせます。個人投資家に人気の大型ハイテク株が軒並み急落したほか、原油価格下落を受けてエネルギー関連が急落。電気自動車大手株は7日だけで21%下落しました。 もっとも、逃避資金の受け皿として米債市場が機能(米金利が低下)したほか、社債市場への影響が軽微であったことは安心材料です。3月に経験した強いショック局面では安全資産とされる「米国債」や「金」も投げ売りの対象となりましたが、ここ数日にそうした現象は観察されていません。現時点でパニックは株式市場に限定されていると判断して良さそうです。 恐怖指数との異名を持つVIX指数が30超で高止まりしている以上(安定の目安は20程度)、株式市場の調整が続く可能性は高いものの、ナスダックが200日移動平均線(9383ポイント)を割り込むような大幅な調整には発展しないと考えられます。仮に、株価下落ペースが一段と加速するならば、米連邦準備制度理事会(FRB)が長期金利の抑制に動いたり、米政府が大規模な追加景気対策の策定を急ぎ、株価下落に歯止めをかけるでしょう。
日本景気の心許なさ、日本株に懸念
そうした中で日本株も打撃を被っています。「GAFA」のような銘柄群が存在しない日本株はコロナ禍のリバウンド局面で米国株をアンダーパフォームしてきましたが、ここへ来て米国以上の下落に見舞われる可能性に注意が必要です。 図は街角景気を映し出す景気ウォッチャー調査と日米相対株価(TOPIX/S&P500)の推移です。コロナ禍で景気ウォッチャー指数が異常的低水準へ落ち込んだため、足もとで両社の連動性は崩れているものの、長期的にみれば波形は密接に連動しています。このグラフが示唆するところは、日本国内の景気が株価パフォーマンスに重大な影響を与えるという極めてシンプルな事実です。アベノミクス開始当初から2014年4月の消費増税直前までのように、国内景気が上向く局面で日本株は米国株を大きくアウトパフォームしつつ上昇しました。その反面、2019年10月の消費増税など日本国内の景気が芳しくない状況においては、米国株を明確にアンダーパフォームします。これは日本株にとって国内景気(内需)が如何に重要であるかを物語っています。 9月8日に発表された8月の景気ウォッチャー調査は現状判断DIが43.9へと2.8ポイント改善し、先行き判断DIも42.4へと6.4ポイント改善しました。コメントからは、Gotoトラベル関連を含めた経済活動再開が景況感を押し上げている様子が見て取れました。ただし、対人サービスの提供を中心に供給制約が残存する中、特別定額給付金の消費刺激効果も一巡しつつあることを踏まえると、改善の持続性は乏しいと判断せざるを得ません。実際、関連指標の消費者態度指数は8月に0.2ポイント低下し29.3となりました。 また数か月後には季節性インフルエンザと新型コロナウイルス感染の併存が危惧される時期に突入します。このように国内景気の先行きがやや心許ないことを踏まえると、やはり日本株のアンダーパフォームが懸念されます。新政権が家計支援策など追加の大規模経済対策に前向きであれば話は変わりますが、現時点でそうした動きはみられません。
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