全国調査で里山の身近な鳥や蝶が急速に減少 「生物多様性、50年で73%低下」とWWFが危機感
また、蝶類では評価対象種103種のうち、33%の34種が年間3.7~22.0%減少していた。年間減少率が高かったのはクロセセリの22.0%。次いでスギタニルリシジミ20.2%、アオバセセリ18.4%それぞれ減少。馴染みのあるオオムラサキは10.4%、主に秋に群れで多数が飛ぶ姿を見ることができた茶色の小さなイチモンジセセリは6.9%、草原などで比較的よく見ることができたジャノメチョウは3.7%それぞれ減少していた。
「普通種」なのに絶滅危惧種並み
環境省によると、同省レッドリストの基準では「絶滅危惧Ⅱ類」は年間減少率3.5%以上。今回調査により、鳥類、蝶類ともその年間減少率は多くの種が絶滅危惧種の認定基準を上回る水準を示していた。今回減少傾向が示された多くの生物種は、以前は身近によく見ることができた「普通種」だった。
同省によると、これら鳥や蝶の種の減少は里山の荒廃が主原因だ。今回の調査ではサンゴの白化や海藻の減少など、気温の上昇などの気候変動の影響とみられる生態系の変化も多く確認された。また外来種の拡大による影響も一部で見られたという。
生息環境別に見ると、森林や山地ではなく、農地や草原、湿地など「開けた環境」(開放的な環境)に生息する種の減少が激しい。これらの場所では里山の荒廃やシカの食害などに加え、稲の害虫駆除に使われる農薬の影響が大きいと考えられるという。
鳥や蝶に見られる身近な生物種の減少について、環境省の担当者は「前回5年前の報告書でも減少傾向が示されていたが、その状況がさらに危機的になっていることが今回明らかになった」としている。里地、里山の中でも農地や草原、湿地などの環境に生息する鳥や蝶のほか植物種も減少していることから、これらの開けた環境の保全策が重要と指摘している。
里山の荒廃が進んでいるが、環境省と日本自然保護協会によると、市民による里山保全活動は活発に行われている。市民ボランティアによる水田、林、草原の管理や調査活動、普及教育活動などの活動事例は年々増加しているという。