2024年「天才賞」フェローシップが発表! 40代から60代の4人の受賞者にそれぞれ1億1500万円の賞金
2024年のマッカーサー財団「天才賞(Genius Grant)」フェローシップの受賞者22人が、9月30日に発表された。アメリカ屈指の資産家だったジョン・D・マッカーサー(1897-1978)の遺産をもとに1981に創設されたこの賞は、年齢問わず芸術や文化、教育、社会、経済などの分野で活躍する人を対象に毎年実施されている。歴代受賞者の最年少は13歳で、最高齢は81歳。今年は4人のアーティスト、ジャスティン・ヴィヴィアン・ボンド、トニー・コークス、エボニー・G・パターソン、ウェンディ・レッド・スターが選ばれた。彼らには、アメリカで芸術家に授与される賞の中でも最高額となる80万ドル(約1億1500万円)が贈られる。 ジャスティン・ヴィヴィアン・ボンド(61歳)は、作品制作に加え、キャバレーの演出を通してその時々の政治的・文化的エートスを探求して歴史に結びつけ、現代が抱える問題、特にクィア・コミュニティが直面する課題に取り組んでいる。ヴィヴィアンは2024年9月に、ニューヨークで有名なパフォーマンス・スペース、Joe's Pubでラナ・デル・レイやケシャなどの楽曲を使用した公演「The Devil's on the Loose」を行った。 メディアアーティストのトニー・コークス(68歳)は、映画の映像、ポップミュージック、ジャーナリズム、哲学書、ソーシャルメディアから得たテキストや音楽、映像の断片をDJのようにサンプリングした映像作品で知られている。彼の作品における予期せぬ並置は、飽和状態にあるメディア環境から生じる支配的な物語が、既存の権力構造を強化する様を浮き彫りにしている。 エボニー・G・パターソン(43歳)は、紙や美しいスパンコールやビーズ、蝶のモチーフなどを幾重にも重ねた作品を制作している。これらは、植民地主義の歴史を扱うと同時に、それによって引き起こされた痛みへの癒やしを意図している。彼女は現在、ルイジアナ州のニューオーリンズ市で11月1日から開催される芸術祭「Prospect New Orleans triennial」の共同キュレーションを務めている。 ウェンディ・レッド・スター(43歳)は、ネイティブ・アメリカンのApsáalooke族とクロウ族をルーツに持つアーティスト。彼女はネイティブ・アメリカンに関する博物館のコレクションや政府のアーカイブ、自身の家族や祖先の写真を用いたインスタレーションを通して、先住民に対する誤解や単純化された描写に疑問を投げかけている。 そのほかのフェロー受賞者は、『Severance』(2018)で知られる小説家リン・マ、現代のネイティブアメリカンの日常生活をユーモアと深い愛情を込めて描いた映画『Reservation Dogs』共同制作者のスターリン・ハルジョ、障がい者の率直な声を広め、障がいと人種、民族、ジェンダーアイデンティティの交差点を探求する場である「Disability Visibility Project」創設者アリス・ウォンなど。
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