「妻の死を無駄にしない」殺害現場のアパートを25年間借り続ける夫 新たな“DNA捜査” 期待もハードル 未解決の主婦殺害事件 名古屋
■「殺されたうえで夢を失わないといけないのか」
高羽さんと「宙の会」はいま、「代執行制度の実現」と「DNA捜査の法制化」を訴えている。 「代執行制度」は、民事裁判で殺人事件の被害者遺族が加害者に損害賠償を請求し、判決確定後、加害者が支払うべき賠償金を国が一旦、遺族に建て替えた上、加害者に支払いを求めていく制度だ。 実際は、加害者が損害賠償を踏み倒すケースも珍しくない。日本弁護士連合会によると、被害者側が受け取った賠償金は、裁判などで認められた額のうち、殺人事件で13.3%、強盗殺人事件では1.2%に留まっている。 高羽悟さん: 例えば確定判決で1億という判決がでたなら、一旦、1億のお金を被害者に払えば、国が求償権を持ちますので、国が責任をもって犯人に求償する。刑務作業費から1000円でも2000円でもいい。“刑期を全うすれば償った”ではなくて、刑期を務めても毎月ひかれるて、そこで経済的に補填して、やっと償いですよということを感じてもらわないといけない。 「宙の会」の活動で高羽さんが目の当たりにしてきたのは“被害者遺族の経済的負担”だ。加害者に支払い能力がないケースも少なくないが、賠償金の支払いを通しても罪を償って欲しいと考えている。 高羽悟さん: 遺族が前向きになれると思うんですよね、一旦でも生活費が入れば。それが何をするのも我慢する。それは“お父さんが殺されたからだよ”って。“希望の大学に行きたい”、“そんなお金はないよ”って。なんで殺されたうえで色々な夢を失わないといけないのか。その辺がおかしい。
■捜査を飛躍的に進めるために…求める「DNA捜査の法制化」
事件の発生からちょうど25年の2024年11月13日、高羽さんは、名古屋市西区の商業施設で犯人の似顔絵入りのチラシを配り、情報提供を呼びかけた。 2024年10月には、捜査の進展を期待し、若手の捜査員に現場の自宅を案内した。犯人逮捕につながる手掛かりを求め、動き続けている。 高羽悟さん: これが犯人の血でしょうと判明して、当時の担当の刑事さんに聞いたらそのとおりだと。 そんな高羽さんが今、期待を寄せているのが「DNA」だ。 高羽悟さん: (DNAは)究極の個人情報ですから、扱いは慎重にしないといけないとは重々わかるんですけど。被害者としては、少しでも活用してもらって、1件でも2件でも犯人が捕まればいいなと思うんですけど、なかなか難しいですよね。 現在も、警察の捜査で「DNA型鑑定」が活用されている。身体的特徴や病気に関する情報を含まない部分のDNA型の特徴を分析し、個人を高い精度で“識別”する。 高羽さんら「宙の会」は、“識別”だけでなく、最新技術を活用して、DNAから「年齢幅」や「病歴」などを導き出し、捜査に活用できるような法整備を求めている。 しかし、遺伝情報は究極の個人情報のため、慎重な扱いが不可欠で、非常にハードルが高いと言える。 高羽悟さん: 抑止力になると思うんですけどね。少しずつでも生きている間に目途がつけられるようにやっていきたい。そういう意味では、奈美子の供養になるというか、そういうことはパワーになるというか。なんとか死ぬまで、奈美子の死が無駄にならないようにやっていきたい。