台湾発の リテールメディア ネットワークは次世代の購買体験をどう変えるのか。大規模D2Cプラットフォームとの戦略的タッグが生み出す新たなアプローチ
潜在顧客を見つけ広告効果を最大化する
DIGIDAY:リテールデータの活用について、その考え方や方法について教えてほしい。 リー:まずリテールデータを活用する上で重要なのは、それがクライアントにどのような利益をもたらすかということだ。多くのリテールメディアネットワークはトランザクションのデータを持っていて、「誰が何かを購入したか」を知っている。だが、広告主であるブランドが求めているのは、ロイヤルティの高い顧客だけでなく、新たな潜在顧客にもアクセスできるかという点だ。我々のRMNは、ブランドに新しいアイデアを提供し、新しい顧客を見つけるためのインサイトを提供することをゴールに据えている。 ヤン:ファーストパーティデータである自社のメディアデータ、セカンドパーティデータであるリテールデータ、そして、サードパーティデータであるアドネットワークのデータを組み合わせることで、クライアントにより多くのインサイトを提供することができる。その広告がどのようにクライアントに貢献できたか、そして、今後のアクションに向けて何をするべきかといったものだ。 リー:データを組み合わせることで、ターゲットの人物像やパーソナリティを明確にし、潜在的な購入意図を精緻に予測できるようになる。たとえば緑茶のような、いわゆる「クワイエットドリンク」を楽しむような人は、スポーツのような「アクティブな行動」を好むイメージを結びつけにくい。しかし、データを組み合わせることによって、緑茶の広告をクリックした人が、ナイキやニューバランスのスポーツウェアも購入している、といったことが見えてくるかもしれない。また、ヘアドライヤーをプロモーションする際のオーディエンスを考えるとき、女性は若年層であっても気に入ったものに対してはお金をかける傾向があり、エンジニアの中でも高年収の40代男性はヘアケアに関心を持っている可能性がある、といったことを導き出すことができる。こうした潜在的なオーディエンスを提案することで、クライアントは機会損失を防ぎ、新たなアイデアや機会をもたらすことができる。こうした情報は、我々のメディアプランニングにも役立つし、実際にクライアントが求めるものでもある。 ヤン:エージェンシーからは、ユーザーの購買行動から興味のある商品、支払い条件などの情報を含め、データやそのインサイトから得た戦略をクライアントに伝えるための手助けをしてほしいと言われることが多い。たくさんのリテールデータがあるなかで有用なインサイトを見つけるのは本当に難しいが、jooii®はマーケティングのためのデータをあらゆる角度や視点から提供してくれる。 異なる角度での分析は、広告クリエイティブを制作する上でも重要だ。商品についてより多くのストーリーを伝えるため、DCO(Dynamic Creative Optimization)などの動的なクリエイティブモジュールも取り入れ、広告フォーマットの精度も高めている。 DIGIDAY:91APPとのコラボレーションによって、どのような成果をあげているのか。 リー:我々はこのプロダクトを5月にローンチしたが、ビジネス面では、これまで我々のアドネットワークでは取り組みのなかった新規クライアントを多く獲得している。 そして、わずか3カ月でリテールデータとjooii®の導入率が倍増した。5月のスタート時点でリテールデータを使用していたブランドは全体の3分の1だったが、現在ではおよそ3分の2のブランドが使用している。そして、今ではほぼすべての新規ブランドが、リテールデータやリテールインテリジェンスの提供を希望している。 サービス面では、リテールデータから得たインサイトをレポートにまとめ、次のアクションに繋がるような提案を行っているが、その結果、クライアントの満足度が全般的に上がっている。メディアの広告枠を購入するだけでなく、貴重なインサイトも得られるためであり、それがほかのアドネットワークと差別化できている要素だ。