台湾発の リテールメディア ネットワークは次世代の購買体験をどう変えるのか。大規模D2Cプラットフォームとの戦略的タッグが生み出す新たなアプローチ
リテールAIを取り入れたRMNを構築
DIGIDAY:91APPと提携した経緯について教えてほしい。 リー:以前からリテールメディアネットワークのトレンドに注目していたのだが、アドネットワークの最適な戦略を考えた際、リテールデータとアドネットワークを組み合わせることができないかと考えた。そこで、昨年初頭からパートナーを探し始めたが、幸運なことに、我々は台湾最大のD2Cソリューション企業である91APPと出会うことができた。 91APPは、eコマースサイトを構築できるSaaSプラットフォームを運営している台湾初の上場D2Cソリューション企業だ。中規模から大規模までのブランドやチャネルに特化していて、そこにはファミリーマートや無印良品、スノーピークといった日本の有力ブランドのほか、リーバイスやティンバーランドなどのグローバルブランドも含まれる。 リー:彼らは会員カードサービスも提供しているため多くのリテールデータを保有している。また、加盟店である小売企業のeコマースとD2Cビジネスを支援しており、購買を促すパフォーマンス広告に注力している。一方、我々は小売企業と直接の関わりがないが、我々のクライアントであるブランドはリテーラーのデータやインテリジェンスを活用してより良いオーディエンスを見つけたいと考えている。双方のニーズが完璧に合致していたというわけだ。 そこで、我々のアドネットワークと、91APPが開発した小売業界向けに特化したAI「jooii®(ジョーイ®)」を組み合わせるという独占的パートナーシップを結び、リテールメディアネットワーク(RMN)を構築するという試みをスタートした。
オンサイトとオフサイト双方の体験を強化
DIGIDAY:アドネットワークとリテールデータを統合することでどのようなアドバンテージが生まれるのか。 リー:より多くのタッチポイントからデータを取得し、それらを統合して広告の機会を最大化することができる。これにより、広告ターゲティングの精度が高まり、ユーザーに対してより関連性の高い商品リコメンドを行うことができる。 また、我々のRMNが従来のRMNと異なる点は、多くのRMNがオンサイト(自社サイト)のeコマースでのコンバージョンに焦点を当てていることだ。たとえば、Amazonのキーワード検索広告や商品リコメンドは、おもにオンサイトの体験に焦点を当てていて、オフサイトでの購入はオンサイト体験の延長と見なされることが多い。つまり、オンサイトに顧客を呼び戻し、eコマースでの購買を創出しようとする。 しかし我々のRMNは、車の保険や配達サービスなど通常はeコマースで販売しないような商品にも対応している。リテールデータを活用することで、オンサイト、オフサイト双方の体験にフォーカスすることができる。これが、我々が従来型のRMNの要素を超えている点であり、さまざまなブランドのために既存の広告フォーマットをさらに向上させている理由でもある。 DIGIDAY:現在どのようなクライアントがいるのか。また、台湾のローカル企業とグローバルな企業の比率は? ヤン:パナソニックや資生堂、明治、花王、サムスンといった大手にも数多く利用いただいている。食品や飲料などの日用品はもちろん、映画やクレジットカード、Google Playのようなデジタルコンテンツ配信サービス、3C(コンピュータ、通信、消費者電子機器)など業界もさまざまだ。 クライアントの多くはエージェンシー経由だが、おそらくローカル企業とグローバル企業で4対6くらいの比率だ。我々のアドネットワークはもともと、ブランディング広告にフォーカスしてきたため、グローバルブランドによる予算はかなり高い傾向にある。