【阪神 火の玉ルーキーズ】ドラ1・伊原陵人(5)NTT西日本入社後、ウエートトレで球速が大幅アップ
NTT西日本で理想の直球を手に入れ、ドラフト1位指名まで上り詰めた。昨年の都市対抗まで最速は142キロ止まり。それが一冬を越えると、見違えるように進化を遂げた。 「大学まではそこまで(ウエートは)していなかった。5月の日本製鉄瀬戸内戦は、ウエートをしっかりやって良かったなと思えた試合。目に見えて球速が伸びたというところで、安心もしました」 今年3月のJABA大阪・和歌山連盟春季大会の泉州大阪野球団戦で145キロを計測。5月、都市対抗近畿地区2次予選の日本製鉄瀬戸内戦では最速149キロをマークした。 入社後、ウエートトレーニングに本格着手したことが奏功した。大学4年時に指名漏れした一番の要因を「直球の弱さ」と分析。“ウエート初心者”だった陵人は、まず座学から始めた。どの筋肉を鍛えれば、球速が伸びるのか。暇さえあれば、本やインターネットで知識を蓄えた。陵人と二人三脚で「専用ウエートメニュー」を作成したNTT西日本の草なぎ翔太トレーナー(25)は、その知識の豊富さに驚いたという。 「彼は自分があれこれ言う前に、どういうメニューを行えばいいか分かっていた。自分はそこに少し、アドバイスをしただけだった」 重点を置いたのはバーベルスクワットだった。ボックスジャンプなど瞬発系のメニューは難なくこなせていたが、パワーを発揮するトレーニングは苦手だった。地道に重量を上げていき、初めは70~80キロだったバーベルが今では100キロ超。太もも回り、尻は目に見えて大きくなっていた。みるみる球速を伸ばした陵人を見て、NTT西日本の河本泰浩監督(42)は「これはプロに、それも上位で行くかもしれない」と期待を膨らませたという。 「ここまで伸びたか、と思いましたね。来年はこいつが抜けるのか…と複雑な思いにもなりました(笑い)」 ドラフト解禁年にアピールを果たし、結果はドラフト1位指名。信じて続けてきたトレーニングの成果が証明された。それでも、まだ自分の直球に納得はいっていない。 「MAXは150を超したいですし、平均球速も140後半まで引き上げないといけない。やってきたウエートをしっかり続けて、1月の合同自主トレまでにしっかりステップアップして迎えたい」 中学時代に一度はやめた野球。それでも、親や多くの指導者に恵まれてプロ入りを果たした。だからこそ、恩返ししたい気持ちは誰よりも強い。「これからも応援してもらえる選手になりたい」。自分だけではない。これまで支えてくれた人々のため、阪神でも懸命に腕を振る。(松本 航亮) ※この稿終わり。次はドラフト2位・今朝丸裕喜 ◇伊原 陵人(いはら・たかと)2000年(平12)8月7日生まれ、奈良県橿原市出身の24歳。小1から晩成フレンズで野球を始め、主に投手。八木中では軟式野球部。智弁学園では2年春から背番号11でベンチ入りし2年秋から背番号1。3年春に甲子園出場。大商大では2年秋に最優秀投手、3年春に最多勝、最優秀防御率でベストナインを受賞。NTT西日本では2年連続で都市対抗出場。1メートル70、77キロ。左投げ左打ち。