「千葉」が地質時代の名前になる?「チバニアン」から考える地磁気の変化
「チバニアン」という言葉が先月、ニュースをにぎわせました。 チバニアンとは日本の研究グループが国際機関に申請した新しい「地質時代」の名称のことで、地球46億年の歴史の中で約77万年前から12万6000年前の約55万年間を指します。地質時代の名称といえば、恐竜好きの人なら知らないはずはない「ジュラ紀」や「白亜紀」などが有名でしょう。認定された場合は、日本の千葉県にちなんだ名称が、ジュラ紀などのように地球の歴史上のある期間を示す名称として全世界で使用されることとなります。
研究グループは、この「チバニアン」という時代が始まる約77万年前は、「地磁気」が最後に「逆転」したときだと考えています。とは言っても、「地磁気の逆転」という単語を初めて聞く人も多いでしょう。今回は日本で初めての快挙になるかもしれない「チバニアン」をきっかけとして、私たち人間が普段感じることのできない「地磁気」とその時代による変化について考えてみたいと思います。
「地磁気の逆転」は過去に何度も発生
そもそも「地磁気」とは一体なんなのでしょうか。 皆さんも小さい頃、磁石の周りに砂鉄がきれいに並ぶ様子を教科書などで見たことはありませんか? これは磁石のつくりだす磁気の影響を受けて砂鉄が整然と並ぶからです。同じように、地球自体が作り出している巨大な磁気があります。それを「地磁気」と呼んでいます。 地磁気がある。これは地球の内部に1つの大きな棒磁石があるということです。磁石はN極同士またはS極同士を近づけると反発し、N極とS極を近づけると引き合います。そのため、方位磁針のN極と引き合う北極にはS極、南極には反対のN極があることになります。磁石の力はN極からS極へ向かうため、現在の地磁気の向きは「北向き」となります。この磁石の性質を利用することで人類は方角を知ることができるようになり、地球上のあらゆる場所での移動を可能としたのです。
この「地磁気の向き」が北向きであることは、当たり前だと思う方が多いでしょう。ですが、実は、この「地磁気の向き」が今と同じではなく、逆転していた時代が過去にはあったのです。なぜ地磁気が逆転するのか。実は現在でも逆転のメカニズムの詳細はわかっていません。ですが、大昔の時代に地磁気が逆転したことはわかっています。どうしてでしょうか? そのカギは、岩石にあります。例えば、火山から出る溶岩は、高温の液状のものとして出てきますが、やがては冷えて固まります。地球上にある岩石は高温の液体であるマグマが冷え固まるとき に、その時代の「地磁気の向き」を記憶します。記憶するということは、岩石自体がとても弱い磁石になったと言うこと。つまり、その岩石が作り出す「磁気」を測定することで、その強さや方向がわかるのです。他にも鉄やチタンを含んだ鉱物は、その当時の「地磁気の向き」に揃うように海底や湖底で堆積します。そのため、基本的に地球上にある岩石は全て、岩石ができあがった当時の「地磁気の向き」を覚えています。 こうした古い時代の「地磁気の向き」を世界中で調べた結果、「地磁気の向き」が現在と同じ北向きを示す岩石だけではなく、現在とは逆の南向きを示すものがありました。さらに調査を進めると、この「逆転現象」はたとえば直近の360万年間では 11回も起こっており、地球の歴史の中では決して珍しくない現象であることがわかりました。ただし、逆転が起こる周期は一定ではなく、数千年で逆転することもあれば、白亜紀の頃のように約3000万年間も同じ向きのままだったこともあります。現在のところ、約34.5億年前の岩石にも当時の地磁気が記録されていたことがわかっています。そして、最後に逆転、つまり現在とは逆の南向きだった地磁気が、現在と同じ「北向き」になったのが約77万年前だったのです。