「千葉」が地質時代の名前になる?「チバニアン」から考える地磁気の変化
GSSPに認定されるためには、他にも「地層が堆積した当時の環境変動がよくわかる」という条件があります。今回は研究者による地道な調査・研究により「地磁気の逆転」が起こった前後の地層中に入っていた花粉の化石や微化石の分析を行ったことで、条件を満たしていると考えられます。 もしも認定されたとすれば、「ゴールデンスパイク」と呼ばれる金色の杭が対象の地層に打ち込まれます。ただ、同時代を示す地層としては、千葉だけではなく、イタリアでも2地点が候補に挙がっており、最終決定にはまだしばらく時間がかかると思われます。
今も少しずつ変化している「地磁気」
普段は意識することがほとんどない「地磁気」。でも、この地磁気があるおかげで私たちは平和に暮らすことができるのです。例えば、太陽からは光や熱だけでは無く、高いエネルギーをもった有害な粒子も放出されています。地磁気はこうした有害な粒子が地表に届かないようバリアの役目をしています。地磁気はまさに「縁の下の力持ち」という表現がしっくり来るものだと思います。 また、地磁気の「逆転」という大規模な変化だけではなく、小さな変化もしているのです。例えば、方位磁針が指す「北」と地図でいう「北」には若干のズレがあります。東京の場合、方位磁針が指す「北」は地図の「北」から約7度西にズレています。これが江戸時代の頃には地図の北から東に最大8度も傾いていたことがわかっています。今もゆっくりですが、このズレは着実に変化をしています。 日本の地名として初めて地質時代の名称になるかもしれない「チバニアン」。認定の結果がどうなるのか、固唾をのんで見守ってほしいのと同時に、普段は感じることのない「地磁気」の変化という現象にぜひ注目してください。
◎日本科学未来館 科学コミュニケーター 伊藤健太郎(いとう・けんたろう) 1982年、千葉県生まれ。専門は地球年代学。博士課程の途中に青年海外協力隊としてベナンで理数科教師を経験。バイクと車が大好き。金沢大学大学院自然科学研究科を修了後、放射線測定に従事した後2015年4月より現職 《写真提供》 ・千葉県市原市の地層を地質時代の国際標準として申請 認定されれば地質時代のひとつが「チバニアン」に(国立極地研究所)