鼻にスプレーするだけの「フルミスト」か注射か…小児科医が解説「インフルエンザワクチン」2タイプ徹底比較
■経鼻弱毒生インフルエンザワクチン さて、今シーズンからは、新たに「経鼻弱毒生インフルエンザワクチン」が使えるようになったのをご存じですか? アメリカでは2003年から使用が開始され、現在では世界35カ国以上で使われていますが、日本では今年から使えるようになりました。昨年までは、個別輸入した医療機関で自費接種できるだけだったのです。 この「経鼻弱毒生インフルエンザワクチン」は、商品名を「フルミスト」といい、注射ではなく、液体を鼻の穴に噴霧するタイプの生ワクチン。左右の鼻に0.1mlを1回ずつ、つまり合計0.2mlを噴霧します。ことさら頑張ってワクチンを吸い込んだり、すすったりする必要はありません。私のクリニックでも接種を開始しましたが、ワクチンが鼻腔から垂れてくるようなこともなく、鼻がツンとすることもないので、非常に好評です。 日本での接種対象者は、2歳から19歳未満まで。海外だと49歳まで接種可能な国が多いようです。しかし、フルミストは若い人のほうが効果が高いことがわかっているので、大人は従来通りの注射のほうがいいでしょう。 ■注射とミストの副作用について ただし、他のワクチンや薬と同様に、確率は低いとはいえ、インフルエンザHAワクチンでも、フルミストでも副反応は起こり得ます。 インフルエンザHAワクチンの副反応は、接種部位の発赤、腫脹、疼痛等が主なものです。全身反応として、発熱、悪寒、頭痛、倦怠感、嘔吐・吐き気、下痢、食欲減退、関節痛、筋肉痛等の報告があります。 フルミストの副反応は、添付文書によると鼻水が出たり、鼻が詰まったり、咳、口腔咽頭痛、頭痛が10%以上出ると書かれていますが、治験でプラセボ(偽薬)を点鼻したときと同じくらいの割合です。そのほか鼻咽頭炎、食欲減退、下痢、腹痛、発熱、活動性低下・疲労・無力症、筋肉痛、インフルエンザが1~10%未満の確率で起こることがあります。鼻に何かを入れられるというのは多少不快なので、気持ちが塞いで食欲が減ることもあるのでしょう。ただし、発熱とインフルエンザ以外は、やはりプラセボでも同じ割合です。 またフルミストは弱毒化した生ワクチンなので、不活化ワクチンとは違ってインフルエンザウイルス感染症になってしまうリスクがわずかながらあります。でも、重症化したという報告はありません。