クラフト・バンブー・レーシングのスーパー耐久初優勝に太田格之進も歓喜。“メインの仕事”でもいい流れに乗れるか
大分県のオートポリスで行われた2024 Empowered by BRIDGESTONE第3戦『スーパー耐久レース in オートポリス』の決勝レース。総合優勝をかけて争われたST-Xクラスでは、中盤から終盤にかけて着実な追い上げをみせた33号車Craft-Bamboo Racing Mercedes-AMG GT3(リー・ジェフリー/太田格之進/チェン・ディーン/リアン・ジャトン)が、シリーズ参戦2レース目にして初勝利を飾った。 【写真】接触でダメージを負いながらも追い上げた33号車AMG GT3 このチームのBドライバーとして参戦している太田は、チーム全員で掴んだ勝利だと喜んでいた。 前日の予選では、Bドライバー予選にて太田はライバルに0.8秒の差をつける1分48秒247をマーク。Aドライバーとの合算タイムで決まる総合結果では、81号車DAISHIN GT-R GT3に敵わず2番グリッドからのスタートとなった。 開幕した決勝レースでは、Aドライバーのリー・ジェフリーが第1スティントを担当するも、序盤にST-Zの車両と接触し左フロント部分を破損。さらにドライブスルーペナルティまで受けてしまい、トップ集団から大きく後退することになった。 ただ、その直後にNANIWA DENSO TEAM IMPUL Zがクラッシュを喫した影響でセーフティカー(SC)が導入。33号車Craft-Bambooにとっては、これが優勝争いに戻れるチャンスとなる。 「SCが入ってくれたことで、ロスしていた分を取り返すことができました。そこからは速さを見せることができたと思いますし、チームメイトも本当に頑張ってくれました」と太田。 レース再開後は、チェン・ディーンと、2023年スーパーGTのGT300クラスに参戦した経験を持つリアン・ジャトンがバトンを繋いで総合3番手に浮上。残り1時間30分を切ったところで最後のピットストップを行い、最終スティント担当の太田が乗り込んでトップを追いかけた。 残り1時間を切ったところでは、優勝候補の81号車DAISHIN GT-R GT3(今田信宏/藤波清斗/坂口夏月/渡会太一)に対し、ピット作業時の押しがけについて『1周減算』のペナルティが課された。 そのため、太田の乗る33号車は先行する23号車TKRI松永建設AMG GT3をパスすれば優勝できるという状況を迎え、ジェントルマンドライバーのDAISUKEが乗る23号車AMGとの差を着実に縮めた太田は、残り30分のところで逆転を果たした。 表彰式では33号車の4人が大はしゃぎでシャンパンをかけあっていたが、太田はチームワークで掴んだ勝利だと語る。 「このチームは、僕以外の全員がアマチュアドライバーです」 「他のチームを見てもらえれば分かりますが、プロが何人か入っているなかで、(チェン・)ディーンは、この前の富士24時間で初めてGT3マシンに乗ってから今回が2回目ですし、アレックス(リアン・ジャトン)も、Aドライバーの(リー・)ジェフリーもそこまで経験豊富というわけではないです」 「プロドライバーは僕しかいないというなかで、こうして勝てたというのはすごく意味のあることだと思います。他のチームの布陣を考えると、この結果で終われたのは良かったと思います」 「マシンへの習熟もすごく進んでいますし、エンジニアの方もスーパーフォーミュラやGT500の経験がある人で、僕の言いたいことをすごく理解してくれるので、セットアップも円滑に進んでいます」 「チームも、アジアの中でのメルセデスワークスのような感じなので、本当にプロフェッショナルな仕事をしてくれていて、僕が心配することは何もなく『とにかく速く走るだけ』という感じでした」 達成感に満ちた表情をみせていた太田。今回優勝できたことに対し、改めてメルセデスのマシンでS耐に参戦することを承諾してくれたHRC(ホンダ・レーシング)に感謝を述べていた。 「ホンダのドライバーがこうして(他メーカーの車両でレースに)出るというのは今まで全然なかったことだと思います」 「この参戦をHRCに認めてもらえたことで、海外のチームと仕事をするという経験を積めていますし、いろいろな部分で成長できています。あとはコミュニケーションの部分ですね。それは言葉だけではなくて“海外の人たちを盛り上げる、一緒に楽しむ”というところは日本の盛り上げ方とは少し違うところがあります」 「それぞれに良いところがあるのを感じていて、それを日本にいながら学べているというのが大きいです。改めてクラフト・バンブー・レーシングとHRCの両方に感謝しています」 今週末は自身も「メインの仕事」と語るスーパーGT第4戦富士を迎える。S耐の1週間前に行われたスーパーフォーミュラ第4戦富士では、決勝ペースに自信がありながらもオルタネーターのトラブルによってスタート前をに戦線離脱するという悔しい結果となった。 「SF(スーパーフォーミュラ)もGTも速さは出せていると思うのですが、最近は少し歯車が噛み合わないというか、うまくいかないなという部分があります。でも、こうしてS耐で勝てたので、良い流れがくると信じています!」と笑顔を見せる太田。 ここで結果を一つ残すことができたことで、他のカテゴリーでも勢いに拍車がかかりそうだ。 [オートスポーツweb 2024年07月30日]