「突き指するからノックはやめておけ」とはならない・金本知憲さん プロ野球のレジェンド「名球会」連続インタビュー(31)
プロ野球のレジェンドに現役時代や、その後の活動を語ってもらう連続インタビュー「名球会よもやま話」。第31回は金本知憲さん。1492試合連続フルイニング出場のプロ野球記録を持つ強打者はファンから「鉄人」「兄貴」と呼ばれて愛されました。44歳まで現役を続けた体を支えたのは過酷なトレーニングの他に、体質を考慮した「練習」だったそうです。(共同通信=中西利夫) 打球の行き先はボールに聞いてくれ・加藤秀司さん プロ野球のレジェンド「名球会」連続インタビュー(30)
▽「スイング週間」を設定したのが甘かった 後悔はいっぱいある。32、33歳を過ぎてから、もっと練習しておけばよかったなというのが一番の悔い。僕は自分で「スイング週間」というのを決めていた。この2週間は、けがをしていようが、体調が悪かろうが、鏡の前で全力でバットを振る。試合前と試合後の1時間は頑張って振ると決めていた。主に試合後だ。練習していなくても打てる時がある。それで打てなくなるとスイング週間を設けた。シーズン中、2回ぐらい。それをやると必ず打てるようになった。月間MVPとか、やった分だけ明らかに結果が出た。だったら、シーズン中ずっとやっとけよ、と僕は思った。それが、やっぱり甘えとか怠け心。腹を決めてバットを振るのをやっておけば、もっと成績が違ったんじゃないかと。年に2回じゃなく4回ならどうだったか。半年間やっていたら、打率もホームランも打点も全然違う数字が残ったと思う。そういう後悔だ。
若い時は確かに練習量は多かったが、がむしゃらというだけで、練習した分が試合の結果に結び付いたかというと、結び付かなかった部分でもある。何をやっていいのか分からなかったと言う方が分かりやすいかも。30歳を過ぎて、自分はこういう練習をすると良くなるというのが分かってきた。バットを振っている時は鏡を見ながらチェックするポイントがある。体のラインとか回転力、下半身の動き、全体のバランスとか。僕の練習というのは、すごく体力と集中力がいる。試合後にやるのは、野球選手は疲れた中でやるのが当たり前だから。それでまた必ず強くなっていかないといけない。ちょっと練習して腰が痛いじゃ、何もできないですよ。 ▽おなかいっぱいになってからが「練習」 体が大きくなりにくい、やせやすい体質だった。現役時代を振り返って本当に頑張ったなと思えるのは、一番は食事。100%できたと思う。自分で褒めてあげたいぐらい。時間をかけて人の1・5倍から2倍を詰め込んだ。食事も練習と思っていた。プロに入った時は線が細く、ガリガリだった。それをむりやり増やさないといけない。一番の問題は量ですね。栄養とか関係ない。おなかいっぱいになって、そこからが練習なんです。満腹に近くなったな、という時点で終わらせたら、すぐやせた。一気に3キロぐらい落ちた。それだけ食べないと体重が維持できなかった。カロリー計算は面倒くさいので全くしません。脂肪がつきにくい体質で、少々カロリーが多い物を食べても大丈夫。太りやすい人は制限するけれど、僕は逆だった。常に胃腸薬は持ち歩いていた。胃腸を壊すと食事が進まないので。