なぜ?異例挑戦!青森山田の”天才2年生MF”松木玖生が仏名門リヨンの練習にテスト参加
ならば、松木はリヨンのU-19においてどんな状況でプレーしているのか。ツイッターに投稿された写真のなかで浮かべる得意気な表情と、一緒に映る3人の選手たちと違和感なく収まっている光景からは、松木自身が「一番のストロングポイント」と胸を張るメンタルの強さが伝わってくる。 青森山田を率いる黒田剛監督も、教え子の一人である日本代表MF柴崎岳(レガネス)よりも「肝が据わっている」と苦笑しながら、身長178cm体重73kgのボディに搭載された、頼もしいほどのふてぶてしさを感じさせる松木の思考回路を称賛したことがある。 「上級生に対してでもまったく関係なく、ピッチの上では呼び捨てだろうが何だろうがどんどん仲間を鼓舞して、遠慮なく指摘できるのが松木のいいところだと思っています」 勝利のために必要ならば、たとえ先輩でも罵倒することも辞さないふてぶてしさは、何ごとに対しても物怖じしない姿勢をも生み出す。おそらくはリヨンでの日々でも全開にされ、英語をはじめとする外国語を決して上手く操れないなかで、周囲とのコミュニケーションを密にさせているはずだ。 3年生に進級した直後の4月30日に18歳になる松木は、その時点で海外への移籍が可能になる。しかし、2大会連続で全国高校サッカー選手権大会の準優勝に涙した翌日の今月12日に、自身のインスタグラムを開設した松木は、自己紹介の一部に「来年優勝旗持って帰ります」と記している。 青森山田高サッカー部の最上級生として背負う責任も必ず果たすと誓っているからこそ、黒田監督も引き続き大黒柱を託す松木が、東北高等学校新人サッカー選手権大会に臨んだ新チームを留守にすることを、さらには渡仏してリヨンの練習に参加することを許可したのだろう。 果たして、松木を欠いた新チームは圧倒的な実力を発揮して4連覇を達成している。今度は自分の番と意気に感じている松木は、これまでFW伊藤翔(現横浜FC)やFW宮市亮(現ザンクトパウリ)、DFファン・ウェルメスケルケン際(現ズヴォレ)らが挑んできた、高校からJリーグを経由せずにヨーロッパへと殴り込む日本人選手の系譜へ、自身の名前を刻むための挑戦を加速させていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)