大谷翔平は”アジア人差別”の壁を壊した…「オオタニ以前・以後」で変わった日本人のイメージ
今やニュースでその名前を見ない日がないほどのスーパースターとなった米大リーグ(MLB)・ドジャースの大谷翔平選手。 【写真】大谷翔平がメジャーに行く前に「熟読していた文庫本」、その「本の名前」 その大谷選手の取材にエンゼルスへの移籍前から熱心に取り組み、地元紙ならではの肉薄した視点で精緻に報道し続けてきたのが、アメリカ最大の日刊紙・Los Angeles Times(ロサンゼルス・タイムズ)。 ドジャース入団が決まった2023年末、L.A. TimesがリポートしたのはMLBで躍進する大谷に、日本人はもちろんアメリカ国内のみならず、世界のアジア系の人々に勇気と誇りを与えていることだった。 大谷の100点を超える写真と13万字以上の詳述で大谷の全軌跡を記した『L.A TIMES』公式独占本『OHTANI’S JOURNEY 大谷翔平 世界一への全軌跡』(L.A. Times編/サンマーク出版刊)。本書からその一部をお届けする。
アジア人が米スポーツで活躍する大きな意義
(テレサ・ワタナベ 2023年12月29日) カリフォルニア州在住の弁護士、キャサリン・シュウは、特に野球ファンだったわけではない。だが大谷翔平が10年7億ドルという破格の条件でドジャースと契約を結んだと知り、興味を引かれた。このスター選手が自分とルーツを同じくするアジア人であり、これまでアジア系アメリカ人の活躍があまり見られなかった米スポーツ界で、最高レベルの輝かしい道を歩んでいることに、誇らしさを覚えた。 「どんな分野でも、アジア系はテレビでそれほど見かけません。スポーツならなおさらです」と話すシュウは34歳の中国系アメリカ人。「もし、子どものころにアートやスポーツの分野で彼みたいに活躍する人を目にしたら、こんなふうに言えたかもしれません。ほらママ、見て。私たちだってこういう分野でも成功できるんだよ。医者とか弁護士だけじゃないんだよ、って。若い世代に新しいチャンスを与えるきっかけになればいいと思います」 現地トーランスの市議会議員を務めるジョン・カジは60年来のドジャース・ファンだ。68歳の日系アメリカ人であるカジは、1995年に野茂英雄が「パイオニア」としてドジャースに加わったときも心躍らせたが、大谷の持つ意味はさらに大きいと感じている。 スポーツ選手としての際立った実力と、人々に愛される魅力を兼ね備えた二刀流である大谷の存在は、「アジア人やアジア系アメリカ人に対して長らく抱かれ、今も残るステレオタイプのイメージを打ち消してくれる」とカジは語る。 アジア系の人たちは、ざっくりと「敵」のようなイメージを持たれがちだ。北ベトナムの共産主義者、卑怯な攻撃を仕掛けた日本軍、中国の技術スパイ。アメリカ人の仕事を脅かす経済的ライバル。数学・科学に没頭するオタク。さらに最近では、新型コロナウイルスを広めた発生源、というものまである。