日本独自の食文化?おかずを食べて白飯を食す「口内丼」に賛否 #食の現在地
「面白い」「抵抗を感じる」欧米人の反応もさまざま
現在、日本国内を旅するインバウンド観光客は増加の一途をたどっている。海外の人は、日本食の文化である「口内丼」についてどのように受け止めるのだろうか。 神奈川県の人気観光地、江の島にある和食店では、日本人に交ざって外国人も多数列をなしていた。 フランスからやってきたという30代のカップルは、ガイドブックのおすすめに沿って、しらす丼とかき揚げ丼を注文。口に運び、「トレボン!(とてもおいしい)」と満足げだ。そこで刺し身定食の写真を指さして、日本には口中調味という食事法があることを説明すると、とても驚いた。 「なるほど、ちょっと抵抗を感じなくもないけど……とても面白い食べ方だね。これができるようになったら、日本にもっと馴染める気がするよ」 一方、「日本のワンプレートご飯に抵抗を感じる」と話すのは、イタリアから来た50代男性。日本が大好きで今回で訪日は5回目だという。 「日本の寿司やラーメンは大好き。でもワンプレートのご飯を出すカフェがあるんだけど、写真を見るだけで抵抗を感じた。サラダにラザニア、肉料理とパン、全部が一皿にのっていることがある。何ならフルーツまでのってる! 基本的にはひとつのメニューを一皿ずつ、順番に食べたい僕たちイタリア人にとって、これはなんだか気持ちが悪い食べ方。もちろん食べられないことはないけど、ちょっと苦手だね」 彼にも口中調味について説明をすると、「ノンエベロ! (嘘でしょ!)」と目を白黒。 「丼なら食べるけどね。何かを口に入れた状態で、その後にご飯を放り込むって、日本人は器用だね。でもやっぱり気持ち悪いね(笑)」
マナーの専門家に聞く「口内丼ってマナー違反なんですか?」
「口内丼」は日本の文化的な食事様式だが、実際のところ、マナーとしてはどうなのだろうか。日本マナー・プロトコール協会理事長、明石伸子さんに話を聞いた。 「『口内丼』という言い方は驚きです(笑)。でも、口中調味というのは、ご飯をおいしくいただくための方法だという認識ではおりました。いずれにしても、すべてはTPOの問題だと思いますね。高級な和食店では、素材を生かしてデリケートに味付けされた料理が一品ずつ出されます。基本的にお酒に合わせるものですから、ご飯と一緒にというよりは、料理そのものを味わっていただくほうがおいしい」 では居酒屋や定食屋で口中調味や口内丼をすることはいいのだろうか。 「TPOの問題ですから、気軽な居酒屋や定食屋のような場所で、おかずを口に入れたあとに白飯を食すのは、よく見かけるシーン。定食の生姜焼きなどは、やっぱりご飯と一緒がいいですよね。特にマナー違反だとは思いません。不快に感じる・感じないは人それぞれですが、あくまでも周囲に気を配りながら、楽しい食事をこころがけることが大切ですね」 食事のマナーは、家庭内でしつけられるもの。さらに他者と会食をする経験を重ねて、それぞれの場所での振る舞い方を身につけていくものだと明石さんは言う。 「会席料理などでは、一品ずつゆっくり味わって、最後にご飯と汁物で締める。家庭や、定食屋さん、学食のような場所では、一緒に食べる人たちを不快にさせない前提で、ご自分の好きなように口中調味をして召し上がったらいいのではないでしょうか」 どんな食べ方でも、その人が食事をおいしいと感じられたら、それでいい、と明石さん。くちゃくちゃと音を立てたり、口の中を見せたり、大声でしゃべりながら食べたりという基本的なマナー違反は避けて、大いに食事を楽しんでほしい。