二拠点生活で自己肯定感も爆上がり! 築75年”超ビンテージマンション”に低予算投資したら「予期せぬ人生の変化」が起きて大正解だった 小説家・高殿円
維持費がかかり、リフォーム費用もかさむイメージの戸別温泉 物件選びのコツとDIYのすすめ
温泉管理費が定額かかる戸別温泉はとかくデメリットばかりが取り上げられるが、水源として別に権利を持てることと、ガスや電気の給湯施設をつかわずあつあつのお湯が使えることは災害時のメリットとして大きい。なにしろ水道が止まってもガスや電気がとまっても風呂にはいれて暖がとれるのだから。もっとも温泉は温泉毎に温度が違うので、ある程度の温度がある源泉でないと結局ボイラーで沸かすことになり光熱費や維持費がかさむ。 とくに戸別温泉の給排水は複雑なので、工事をやったことのある工務店でないと、風呂の移設を嫌がるところも多い。排水は勾配をつける必要があるため、床をだいぶあげる必要もある。つまりリフォーム費用がわりとかさむ。そういうことから風呂の移設はしなくてもいい物件。できれば平成あたりに一度水回りをやりかえている物件を安く買うのが望ましいと思う。 我が家の風呂は、塗装の色を工夫し水栓のハンドルやシャワーヘッドをとりかえて昭和くささを取り払った。塗装は素人でもやりなおしが利き、初期投資があまりかからないのでDIY入門としてかなりおすすめである。 反対に、和室の天井落としは素人には難しい。落とした天井は産業廃棄物になって処理が大変だし危険だ。さらに和室は土壁であることが多く、天井をとりはらえば土壁も壊すことになる。この土壁の土も産業廃棄物で捨てるとかなり高額なのだ。 とにかく安くDIYで雰囲気を変えたいのなら、床の畳だけ便利屋等に依頼して廃棄してもらい、その上に根太と合板を敷いてクッションフロア(マンションなら断熱材は不要)で洋室化してしまう。 和室の天井はたいてい古臭い木目の合板なので塗装が望ましい。白は何度も塗らないとむらがでるのでネイビーか深緑でシックに仕上げるのがおすすめだ。この場合助っ人を呼んで人海戦術でいくとあっという間に終わる。順番は天井が終わったら畳を外して床をやりなおすのがいい。 「ベランダにウッドデッキを敷きたいが難しそうだし市販品は高いよ」という人におすすめなのがすのこのカスタマイズだ。まず、ベランダの幅に合うすのこを買ってきて切断。裏から角材で補強しゴムの緩衝材をつければ、イマジナリーウッドデッキのできあがりだ。 このまま外に出すとすぐに朽ちてしまうので、油性のペンキで塗装のち雨対策のニスなどを塗るとなおよい。おそらく材料費が1万円以下で済むため、既製品のウッドデッキよりだいぶ安く簡単にできる。丸鋸がある人はツーバイフォーの安い木材を買ってきて手づくりしてしまってもよし。 「玄関の床タイルがダサいよ」という方には、サンゲツのフロアタイルをシリコンシーラントで張ってリメイクするのがおすすめ。なんだか古臭いてかてかのフローリングをなんとかしたいなら方法は2つ。1つは電動サンダーで片っ端からニスをはがしてサンディングして、上からオイルを塗って仕上げる方法。これはナチュラルなウッドの風合いが出てとてもいい。サンディングは大変だけれど、失敗しても上からクッションフロアを張れば良いので気楽だ。そしてもう1つは、上からボンドを使って直接クッションフロアを貼る方法もある。 床と壁紙を替えたらもう一気に新しくなった気分になるので、壁紙を替えるのはDIYの醍醐味だ。色は気に食わないけれど壁紙のはがれはないというときは、壁紙に塗装できる塗料もある。 表層を変えると、家の雰囲気はがらっと変わる。人間が髪型やメイクを変えたら別人になるのと似ている。そして、メイクはみな本当に細かく丁寧にやるのといっしょで、リフォームも丁寧にやらないと粗が目立ってしまってよくない。そういう意味で、DIYをする気もないという人は、最初からプロに頼んでもいい。変わるにせよ、変わらないにせよ、まずは、自分自身を知るところからはじめよう。 うまく壁が塗れると「まあどうせ剥げたってまた塗ればいいか」となる。コーキングが打てればあらゆる水回りの補修ができる。いまどき丸のこは5000円で売っていて、これさえ買えばツーバイフォーの木材で棚も家具もなんでもつくれる。ベッドも自作した。 そしてそのことを魚屋さんやほかのお店で話すと、自然と友達ができる。伊豆は古いリゾートマンションが並ぶまち。同じような物件に越してきた人々は、同じような悩みを抱えているからだ。 こんにちは、今日あんこうが安かったですよ。お手伝いに行きましょうか。情報共有し、知恵を出し合えば、新しい仲間の輪が、いとも簡単にひろがっていくのだ。これは都会の暮らしにはなかなかないことだった。 庶民の2拠点生活は、低コストで余剰資金でやるのが大事もしあなたが都会での暮らしや、自分が変われないことに不安や焦りを感じているのなら、セカンドハウスを買えとはいわない。まずはマンスリーやウィークリーで家を借り、場所を変えてみてはどうだろう。 もしかしたら私のように人が変わったかのように交流を楽しみ始めるかもしれない。あるいは友人のように畑をやりはじめるかもしれないし、ここなら犬を飼えると長年の願望に気づくかもしれない。ともかく変化があれば、結局は都会の家に戻ってもいい。 大事なのは余剰資金でやることだ。その投資や行動が命取りになるようなことだけはやってはだめだ。気軽にやれる金額ではじめよう。頭の整理整頓と優先順位さえ間違えなければ、低投資でだってできることはいっぱいあるのだから。 自分にできないことを知ることもまた成長だ。反対に、できることがわかれば、世界はどんどんと広がっていく。わたしらしいわたしの暮らしは、これからどんな風にころがるのか、わたし自身が一番楽しみにしている。 そしていつもこう思うのだ。ああ、お盆やGWやお正月に、特別料金をはらわなくてもいい温泉の出る家を家族ですきなだけ使えるのって、最高だなって。 新しい家族の生き方の一部になったこのぼろ屋を、私は4人目の家族のように愛している。 <書いた人:高殿円(たかどのまどか)> 小説家。漫画の原作や脚本なども担う。2000年、『マグダミリア 三つの星』で第4回角川学園小説大賞奨励賞を受賞。2013年、『カミングアウト』で第1回エキナカ書店大賞を受賞。2024年4月には同人誌『98万円で温泉の出る築75年の家を買った』を刊行し、話題に。 <編集:小沢あや(ピース株式会社)>
小沢あや