藤原ヒロシが「アウェーなカンファレンス」で語った情報の価値
ビジネス、アート、サイエンスなど、領域横断的に未来への視座を交差させるイベント「FUTURE VISION SUMMIT 2024」が2024年11月、東京・丸の内で開催された。 カンファレンスのスピーカーとして、企業経営者、アーティスト、研究者など、第一線で活躍する多様な面々が名を連ねるなか、こうしたステージには異質な人物として注目を集めたのが、音楽・デザインの分野でも活躍する藤原ヒロシだった。 長きにわたってストリートカルチャーを牽引し、表舞台に慣れているだろう藤原だが、キーノート講演として登壇すると、まず「こんなアウェーな場所で話したことはない」と笑いながら会場を見渡した。 企業関係者が多くを占める聴衆を前に、柔らかい語り口で場を和ませていく。そして、「今日の話はくだらないと思う人もいるかもしれません。でも、そのくだらなさの中にこそ面白い価値があることもあるんです」と語りかけ、情報、アート、ビジネスの奥行きに関する深い洞察を展開していった。 ■都市伝説はくだらない話か? 藤原が最初に切り出したのは、「都市伝説」というビジネスには無関係に思えるテーマだった。彼は中学生の頃を振り返りながら、80年代に日本中を席巻した「口裂け女」や「トイレの花子さん」といった説に触れた。 「インターネットもなかった時代に、こういう話が日本全国に広まっていったのは面白い現象だなと思います。社会が不安定なときに、こういった話が広がりやすいとされていますが、誰がどうやって広めたのかは誰もわからない」 聴衆の興味を引きつけつつ、都市伝説といえば、と続けて展開したのが、現代的な都市伝説「鳩=ドローン説」だ。 「2017年ごろにアメリカで流行った『すべての鳩は政府が仕掛けた監視ドローンである』という都市伝説を知っていますか?」と会場に問いかけた。「電線に止まって充電しているとか、妙に細かい設定がよくできているんですよね」とスライドを見せながら説明する。 この説は、ジョークから生まれたものだが、SNSを通じて広まりインターネット上で人気のミームとして根付いた。その背景には、現代の情報社会における監視やプライバシーへの不安があると藤原は指摘する。 「都市伝説が受け入れられる背景には、人々の情報やテクノロジーへの不信感があるんです。表面的にはくだらないように見えるものの、その裏側には人々の想像力や不安感が凝縮されている。そういう背景を掘り下げることが重要です」