「胸にしこりを感じた」ティンダ―で出会った男性の一言で“乳がん”を発見。アメリカ人女性のマッチングアプリ体験談が話題に
「ステージ3の乳がんです」という言葉を、健全に遊びまわって人生を謳歌していた29歳の私が聞くとは思いもしない。だがそれを私は、マッチングアプリ、ティンダーで出会った男性に「君の左胸にしこりを感じた」と言われた5日後、そして生検をしてから4日後、友人たちと私が2020年にがんになる可能性についてジョークを飛ばした翌日に、聞くことになったのだ。 【写真】AIで「出会い」の成功率UP? 専門家が教える最新事情と活用法 タイミングはちょうど、新型コロナのパンデミック渦。生きるのがさらに辛くなるような混乱の時期だった。 まずは少し話を戻そう。がんと診断される前、私は6年間にわたる大恋愛が終わったばかりで、フリーになった人間がまずやるであろうことをした。そう、マッチングアプリのダウンロードだ。 そこでヒットした男性がサム。彼のプロフィールには“コーヒー・ガイ(coffee guy)”と書かれていて、すかさず「アリ!」と思った私は気楽に♡をタップ。 最初のデートで私たちはオシャレなバーをハシゴして、お酒を飲みながら他愛もない会話を楽しんで、最後には軽くキス。どちらとも、本気の恋愛と捉えているわけではないことは分かっていたが、サムの人柄からは、探せばそこら辺にごまんといるようなワンナイト野郎のバイブスを全く感じなかった。むしろ、初対面なのに居心地がよく、くつろがせてくれるような自然体でいられる人だった。だから、また会ってみることにした。 ある夜、2人でベッドに寝ている時に、サムが何気なく私の胸を触り始めた。そして彼が言った。「ねえ。このしこり、検査したことある?」。 私は「いいえ。私の胸だから放っといてよね」と自分でその箇所を触りながら答えた。私の年齢になれば胸の凸凹ぐらい、あっても普通じゃない? 内心そう思いながら、その場はそれで終わった。でも彼の言い方がなんとなく気になった私は、とにかく翌日、病院へ行ってみることにした。
ひとまず超音波の予約を入れた(乳房組織がより密な40歳以下には、マンモグラムは乳がん発見にあまり向かない)。すると驚愕な事実が発覚、なんと5cm幅の塊が見つかったのだ。 検査結果が返ってきた時は、正直「マジでクソッ!」と思った。親や友達になんて言おう? 口に出して話してしまったら現実になる。私には、まだその覚悟ができていなかった。 まず、サムとの交際を止めようと決めた。治療で髪の毛が抜け、疲れ、吐き気で辛そうな顔を見せる"可哀想な彼女の可哀想な恋人"という重荷を背負わせたくなかった。だが、私が別れを告げようとしたら、彼は「いや、それはダメだ」と言い放った。「もし僕が無理だと思った時には、そう伝えるよ。でも、まずはとにかくやってみよう。一緒に闘ってみよう」と言ってくれたのだ。だから言葉通り、私はこの厄介ながんと2人で闘うことにした。 がん治療は受胎能力を完全にダメにしてしまう可能性があるので、私は6月に不妊治療を始め、7月から11月まで化学療法を受けた。 「Hey, What's up?☺」というテキストだけで済む予定だった人、何も始まらず何も終わらない関係のつもりだった男サムは、私と一緒に人生で最も困難な壁を乗り越えてくれる大切な相手だった。“コーヒー・ガイ(coffee guy)”は、私がよく眠れるように、寝る前に髪の毛のない私の頭を撫でてくれるような男性だった。トイレまで間に合わなくて吐いてしまい、壁中に撒き散らしてしまった時は、何も言わず掃除をしてくれる、そんなパートナーだった。