人はなぜ身分と学歴をまとう者にだまされるのか、フランス超エリート校の廃止が持つエリートの意味
■尊大さを秘めた虎があちこちに 県知事や市長の多くが、中央政府の選挙支援で総務省や自治省の学歴エリートに支配されつつあるという事実は、日本がますます中央集権化していることを裏付けている。しかも、彼らは学歴エリートであることで、尊大さを秘めた虎になる可能性がある。この虎退治は簡単ではないのだ。 日本とよく似ているのがフランスである。フランスは、日本以上の中央集権とエリート主義の国家だ。 日産自動車を迷走に導いたカルロス・ゴーンは、こうしたエリートの1人だった。もちろん、日本と違ってフランスのエリートは文部省管轄の大学ではなく、省庁管轄のグラン・ゼコールの出身である。大学3年から入学するエリート校は、まさに狭き門である。
その中でも有名なものが、ENA(L’Ecole Nationale d’Administration 、国立行政学院)、エコール・ノルマル(L’Ecole Normale Supérieure、国立高等師範学校)、ポリテクニーク(L’Ecole Polytechnique、理工科学校)などである。 ナポレオンは近代社会の申し子で、身分や天命を信じず、科学と理性を重んじた。その結果、こうしたグラン・ゼコールというエリート学校を創設するに至る。これらの学校を卒業したものは、高く評価され、やがて学歴エリートとして社会のトップに上り詰めていく。
フランスは、共和政体をとったことで、全国津々浦々をパリと同じように均一化していく。地方の若者も、グラン・ゼコールを出さえすれば、トップエリートの座につくことができるようになる。こうして近代の学歴エリートによる政治の支配が生まれる。 ■廃止されたグラン・ゼコール その中でもとりわけ影響力が大きかったエリート中のエリートこそ、通称ENAと呼ばれる国立行政学院である。この学校は、ナポレン時代ではなく、1945年の戦後に設立された新しい機関だ。