過去8年で中国の出生者数が半減…習近平政権が「本気の反一人っ子政策」を宣言
共産党員に「3人産め」と指令
何事も、強気、強気が信条の習近平政権は、さらに突き進んでいく。2021年8月、「人口及び計画出産法」を再度改正。3人目の子供の出産を奨励したのである。いわゆる「三人っ子政策」の始まりだ。 この頃、中国共産党は、「3人っ子政策を実行する党員幹部の適切な行動」なる文書まで作った。 <一人一人の党員幹部は、あれこれの主観的原因によって、結婚や出産を拒むことはできない。またされこれの原因で、1人もしくは2人だけの子育てをしてもならない。3人っ子政策を実行することは、一人一人の党員幹部が、国家の人口発展の責任を受け持つことであり、国家の人口発展の義務を履行することでもあるのだ。 自分の家族や周囲の人が、あれこれと口実をもうけて、一人っ子や二人っ子に済ませることを黙認したり、放任したりすることは、絶対に許されないのだ……> この文書を読んだ時、改めて中国は、日本とはまるで「別世界」であることを再認識したものだ。共産党幹部にこのような「指導」をしたということは、遠からず全国民に対して「指導」するということだ。 そのつい10年前まで、中国共産党のトップの胡錦濤総書記(当時)は、わざわざ人口問題に関する党中央政治局の学習会(2011年4月28日)まで開いて、こう誇っていたのだ。 「実践が証明しているのは、わが国は比較的良好な一人っ子政策の基本的な国策を実行しており、全国で4億人の以上、少なく産んだ。中国の特色ある社会主義の建設、国家の富強と民族の振興を実現するのに巨大な影響を生み出した。世界人口の促進と発展に、重要な効果を発揮したのだ」 ともあれ、こうした「お上の指導」に対して、14億国民は、「笛吹けど踊らず」の状況だ。二人っ子政策に転じた2016年以降の中国の出生者数は、以下の通りだ。 2016年 1786万人 2017年 1723万人 2018年 1523万人 2019年 1465万人 2020年 1200万人 2021年 1062万人 2022年 956万人 2023年 902万人 2024年上半期 433万人(単純に2倍すれば年間で866万人) このように、「二人目を産んでよい」としたのに、出生者数は過去8年で半減してしまったのである。「これだけ経済が悪化しているのに、結婚して子育てなんかできない!」――若者たちの悲鳴が聞こえてきそうだ。 というわけで、習近平政権が、ようやく重い腰を上げて、全面的な「反一人っ子政策」に乗り出すことにしたのだ。日本も他国のことを言えたものではないが、中国の出生者数がV字回復していくのかは、経済がV字回復していけるかにかかっていると言えるだろう。(参考文献:『未来の中国年表』近藤大介、講談社現代新書) (連載第754回) <今週の展覧会> 霜田あゆ美 個展「あんのんと暮らす」 11月8日~13日 HB Gallery(東京都渋谷区神宮前4-5-4) https://hbgallery.com/schedule/index.php 上の表紙写真の新著『進撃の「ガチ中華」』のイラストを描いてくださったのが、霜田あゆ美画伯だ。表紙から文中に至るまで、約20点散りばめられたイラストの評判が、頗(すこぶ)るよい。きっと読者の半数くらいは、霜田画伯の絵に感銘を受けてお買い求めいただいたのではないか。 そんな霜田画伯が、年に一度の個展を開く。「糸と針、糊とはさみ、絵の具と筆をつかった絵をあれこれ並べた」という今年の個展、私も足を運びます。 <今週の推薦新刊マンガ1> 日本の月はまるく見える 第2巻 史セツキ著 講談社刊 759円(税込) 『モーニングtwo』に大好評連載中の中国人マンガ家・史セツキ氏の自伝的マンガの第2巻が発売された。中国では許されないBLマンガ家を目指して、四川省から遠路はるばる日本へやって来るというストーリーだが、中国と日本の庶民目線での文化比較が瑞々しく描かれている。日本が誇るマンガ文化に、中国の若者が新しい息吹を与えた傑作だ。 <今週の推薦新刊マンガ2> また来週、あなたの器でいただきます 小川茉莉著 KADOKAWA発行 青騎士コミックス 814円(税込) 上記『進撃の「ガチ中華」』を上梓して以来、グルメ関係者とも接点ができて、そんな中で「いま一番味のあるグルメマンガ」と聞いたのが本書。若い陶芸家・隼人とファッション雑誌編集長・優子の「今風の恋の物語」だが、おひたしから茶碗蒸しまで、各章に料理が介在する。軽快な日常のタッチの中に、「人生は器のようなもの」といった哲学が散りばめられている。小津安二郎的な世界が、21世紀のマンガの世界に甦った。
近藤 大介(『現代ビジネス』編集次長)