過去8年で中国の出生者数が半減…習近平政権が「本気の反一人っ子政策」を宣言
今世紀半ばに中国の高齢者は5億人!
鄧小平氏は、「一人っ子政策」を基底とした中国経済の発展ぶりに満足しながら、1997年に死去した。だが21世紀に入ると、「一人っ子政策」のメリットよりも、デメリットの方が露呈するようになった。 第一に、深刻な少子高齢化社会の到来である。中国の人口ピラミッドは、いつのまにか底辺がかぼそい、いびつな形になってしまった。そして16歳から59歳までの生産人口年齢は、2012年頃をピークに、下降に転じてしまった。総人口でも、昨年インドに追い抜かれた。 一方、65歳以上の高齢者は、すでに2億人を超え、約20年後には還暦を超えた人が5億人を超える。そのくせ、今年上半期の出生者数は433万人と、過去最低を記録した。 第二に、男女比のアンバランスである。国連では、「出生者数の男女比(男児の出生者数÷女児の出生者数)は102から107が正常」としている。どの国でも、女性に比べて平均寿命が短い男性は、出生者数が若干多いのだ。例えば昨年の日本の出生者数は、男児37万2595人、女児35万4682人で、男女比は105と極めて正常だ。 ところが中国では、2004年、2007年、2008年と120を超えてしまったのだ。特に農村部で、女児を出産すると、間引いてしまったり、闇で売ってしまったりということが頻発し、無戸籍者も続出した。出産前に女児と分かると、すぐに中絶してしまう妊婦も多発した。 その結果、現在では、結婚適齢期(20歳~45歳)の男性が、女性より約3000万人も多い、いびつな社会となってしまった。若い男性たちが、いわば「結婚難民状態」に陥ってしまったのだ。彼らは「剰男」(シェンナン=余り男)と呼ばれる。
非婚者や「わがままな一人っ子」が急増
第三に、晩婚化、非婚化、そして離婚増である。中国では10年ごと(西暦で末尾ゼロの年の秋)に全国人口調査を行っているが、2010年の第6回調査と2020年の第7回調査を比較すると、恐るべき現象が明らかになった。 〇平均初婚年齢 2010年 24・89歳(男性25・75歳、女性24・00歳) 2020年 28・67歳(男性29・38歳、女性27・95歳) 〇初婚人数 2010年 2200万9000人 2020年 1288万6000人 このように、わずか10年で、初婚年齢は4歳近くもアップし、初婚人数は4割以上も減ったのだ。ちなみに、北京や上海など大都市では、「離婚率」(離婚件数÷結婚件数)が4割を超えている。 第四に、「わがままな一人っ子」が急増したことだ。彼らは両親と、両親の両親にかしずかれて育つ。いわゆる「四二一家庭」(4人の祖父母、2人の親、1人の子供からなる家庭)だ。 そんな子供は、「小皇帝」「小公主」(公主=皇帝の娘)と呼ばれる。まさにわがままし放題だ。私も何度となく、街中で「ウギャーッ!」と騒いで両親を屈服させる「ミニゴジラ」のような子供を目撃したことがある。そのような「わがまま世代」が成長するに従い、社会問題化していった。 他にも例を挙げればキリがないが、ともかく2013年に発足した習近平政権は、このまま「一人っ子政策」を続けていけば国が滅ぶと、危機感を強めたのである。 同年11月の「3中全会」(中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議)で、「一人っ子政策」を徐々に廃止していく方針を決定。2016年の正月から、「人口及び計画出産法」を改正施行した。ここから、約35年続けた「一人っ子政策」に決別し、「二人っ子政策」の新時代に入ったのだった。